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木製サッシ

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小生の生家は築50年。理由あって他人に譲ったが、今でも立派に故郷に建っている。確か開口部は全て手造りの立派な木製建具だった。しかし、隙間風の寒さに耐えきれず、途中でアルミサッシに替えた。そんなトラウマも手伝って、未だ自分の設計に木製サッシを採用したことは無い。

最近では、外に面する開口部は、アルミサッシが定番になっているが、その歴史はそれほど長くない。高度経済成長期あたりから始まった防火規制の強化や、都市部で屋根の軒が少ない建物が増えた影響も手伝って、大量生産が可能なアルミサッシは爆発的に普及することになる。それに引き換え、一品生産の木製サッシは、職人の減少に比例して衰退の一途を辿るのは自然の摂理といえる。

最近、木製サッシを希望する建て主が偶然にも複数現れて再検討を始めている。有力メーカーのショールームを訪ねて実物を観察し、その性能を自分の目で確かめる機会が増えた。腐りに弱い木材をどう保護するか、木製サッシの永遠の課題も見えてきた。逆に結露しやすいアルミの欠点も再認識できた。

東北や北海道の住宅では、アルミより樹脂や木製の窓が多く使われている。北欧の住宅でも、アルミの窓はほとんど見かけなかった。おおよそ寒冷地では、アルミの短所が目立ってしまうのだろう。エコの風潮が高まる今日、木製建具の利点を再認識させられる。真夏には触れないほど熱くなるアルミサッシに比べ、風情があって涼しげな木の框戸。風鈴が良く似合う。

「さてどうする?」建築をやっている間は、いろいろ悩みは尽きない。

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