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メールマガジン 「建築家の自邸、満足と反省の物語」
2002/2/26(できるだけ毎週火曜日発行)
第2章 敷地には規制がある
1.建築基準法と条例(2)
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□ ご購読感謝
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みなさま、こんにちは。はじめまして。
ご購読いただきまして誠にありがとうございます。
このメールマガジンは、これから家を建てる方のために、建築家の私が自邸
を建てたときのエピソードを物語風にアレンジしたものです。
少しでもみなさまの参考になれば幸いです。
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■ 1.建築基準法と条例(2)
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私が入手した借地権の敷地は、個人住宅としてはやや広い。MAXで150
坪の大豪邸が建つ。駐車場が2台、広めのリビング、耳にタコができるくらい
聞かされた妻の希望を盛り込んでも充分にあまりある。
私は最初、大きな中庭を囲んだプランを考えていた。全ての部屋の窓がこの
中庭に向き、外部には一切生活観が露呈しない安藤忠雄風のカッコイイやつだ。
「うん、これなら間違いなく建築雑誌に載る。」
自邸の発表を機に世に知られる著名建築家は多い。「苦節三十年。やっとこ
れで『設計士』を卒業して、『建築家』の仲間入りが出来る。」絶対の自信を
もって妻にプレゼンテーションを試みた。
真っ先に返ってきた言葉は「一体、何考えているの、夢みたいなこと。」
ここまで到達するまでに、あまりにも思わぬ紆余曲折がありすぎて、二人の間
には深い溝が出来ていた。
もともとお金に執着の無い私は、自分の事務所の資金繰りから日頃の経理ま
ですべて権利を妻のケイコに譲渡して久しい。勿論、我が家の家計もかつての
阪神の監督状態。自邸の建築費の捻出方法なぞ頭にもなかった。
一方、ケイコの方は、この借地に目をつけた時から、日々資金の捻出に電卓を叩
いていたらしい。ムダな見せ場が一杯の『第一案』は即座に却下され、曰く
「分不相応な豪邸を建てる余裕はありません。容積が余った分は賃貸用のアパ
ートにします。」
私は目が点になった。もう『貸す』のはコリゴリではなかったのか。
『借りる』のは強いと、借地にしたではないか。『借りて、貸す』?女ってヤツは
まったく・・・。
この時点では、私はまだこのアイディアが私達の自宅建設プロジェクトの最
大のメリットとなることに気がついてはいなかった。
妻のあまりにも毅然とした態度に、反論の余地もない私は、しぶしぶ著名建
築家になる夢を捨てて、かつて独身貴族だった頃の経験をベースに単身者用の
アパートを併用した住宅の設計に着手したのだった。
しかし、こんな私にも意地がある。アパートの部分を極力表に出さないで、
『センス』を売り物としている設計事務所の顔と都市住宅の一つの解を提唱で
きる作品づくりに挑戦することにした。アパートはあくまで付属なのだ。
ところがこれがまた苦難だった。建築関係の法律の場合、その目的の多くは、
災害から身を守ることにある。したがって、人が多く集まる施設程、避難のた
めの有効な手段を講じなければならない。つまり、私の自邸は、アパートを併
設したがゆえに、一般の住宅としての規制より共同住宅としての規制を全てク
リアしなくてはならなくなったのだ。
さすがの私もこれには参った。思い描いていた出世作となるはずの自邸の設
計ではなく、法律上はマンションの一室に私の自邸があるということになる。
結果として、またあの限られた敷地のなかでの、様々な法規との戦いの日々が
訪れた。所詮、設計士とはこんなもの。トホホ。
数週間が経ち、ある程度プランが固まったところで、所轄の建築指導課の担
当者に、見解を求めることにした。設計の途中には、規制をクリアしているか
否か判断できない箇所が出てくる。業界用語で「事前協議」または「お伺いを
たてる」という。いみじくも担当者は私にきつく言った。「間違えないで下さ
いね。これは大家さんの住居がくっついた共同住宅の設計ですからね。」
(つづく)
