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メールマガジン 「建築家の自邸、満足と反省の物語」
2002/5/7(できるだけ毎週火曜日発行)
第3章 間取りを考える
1.ゾーニングと動線
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□ ご購読感謝
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みなさま、こんにちは。はじめまして。
ご購読いただきまして誠にありがとうございます。
このメールマガジンは、これから家を建てる方のために、建築家の私が自邸
を建てたときのエピソードを物語風にアレンジしたものです。
少しでもみなさまの参考になれば幸いです。
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■ 1.ゾーニングと動線
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建物のプランを具体的に進めるにあたり、まず最初に白い紙に測量図から敷
地の形状を写し取る。方位は紙の上方がほぼ北になるように描く。道路もその
幅員を計って敷地図のどこかに書き込んでおく。今回の敷地は所有権でなく借
地のため、地主との約束で建物の構造は非堅固なもの、つまり木造に限られて
いた。そのためにモデュールを91センチとしてこの敷地いっぱいに9ミリの
桝目を薄く書く。
木造の場合、現在でも建材のほとんどがこの寸法に合うように出来ていて、
このモデュールで設計していると実際工事を進める際、合理的でしかも経済的
だからだ。ここまで下図が出来たら、これを30枚ほどコピーする。いつも私は
このためにミスコピーの用紙を日頃から捨てないでストックしている。
さあ、ついに自邸の設計が始まった。
6Bの鉛筆で大まかにエリアを分けるゾーニングという作業に入る。今回は車
を敷地内で反転させる必要があり、必然的に一階から開始した。他の設計の時
は二階から始める時もあり、どちらからという決まりは無いが、途中で交互に
見比べることは頻繁に行う。
敷地図の縮尺は通常100分の1。ここで同じ縮尺で車の型紙を作る。黄色の厚
紙を切って軌道と駐車位置をあれこれ試みる。実際に指で型紙を押してみると、
ほぼ実際の車の軌道が想定できる。これも経験のなせる技か。車の駐車方法の
案は2、3案に絞られた。そうしておいて、次に二階、三階への階段の位置を
考える。
ビルの設計では決定的となるのだが、住宅でも部屋の配置より優先してこの
上下に人が動く動線をどこに置くか最初に考える。このあたりが部屋の配置か
ら入る素人さんとチョット違うところか。
一般に階段の位置は、建物の真中辺りが最も効率的だ。どの部屋へ行くにも
廊下が短くなるからだ。むろん、規模的に余裕があれば、わざと無駄な廊下を
作って工夫を凝らし、見せ場とする設計なんか望むところなのだがー。わが自
邸の場合、アパートを併設することを決めた時点から、無駄を演出するのは許
されなかったので、おのずと階段は建物のほぼ中心に座った。
このゾーニングの時点での部屋の形はおおまかな楕円で表される。楕円の外
郭は「この辺りでよい」と確信するにつれて濃く描かれていく。楕円の大きさ
は部屋の面積を表している。こうして縦長と横長の楕円の集合体で構成された
ゾーニング図、つまり配置計画図は、数十枚の書き直しを経てくると、かなり
具体的な間取り図に近づいてくる。
ところがここで直ぐに部屋割りを急いではいけない。配置計画図の上に、う
っすら見える9ミリの桝目を頼りに、今度は構造計画にとりかかる。ここも少
し素人さんと違うところ。一階、二階、三階のそれぞれのゾーニング図を重ね
合わせながら、建物全体を上下左右に大きく分割出来る軸線を見つけ出す。さ
らに柱の位置がどの階も出来る限り同位置になるようにしたり、また耐力壁と
言って、下から上まで貫いた壁が多く形成されるように楕円(部屋)の大きさ
を変えたり、位置をずらしたりする作業をこころみる。実は、これが後になっ
て構造設計が有利になるポイントなのだ。良い間取りとは、しっかりした構造
体に支えられているものを言う。
一階の半分は駐車場と玄関に割り当て、残った半分の敷地にアパートを配置
してみた。道路は敷地の西側にあるのでアパートは自然に東側になった。一階
はどうしても冬場の日当りが期待できないのだが、幸い東南の隣地の建物がい
まどき珍しく平屋なので、何とか一階のアパートにも日照が期待できようか。
二階は私のオフィスを配置した。この部分はこの自邸の顔となるので、道路に
面してすまし顔を装わなければならない。残りの床面積は、やはりアパートと
した。
こうしてゾーニングを開始してから、ほんの数時間の間に、三階を住居エリ
ア、二階に自分のオフィス、一階と二階の一部にアパートを併設した私の自邸
の骨格が自然に決まった。動線としては、一階から三階へ貫く階段が、建物の
ほぼ中心にあり、三階の住居部分では、階段を上がって右手が個室のつながる
プライベートエリア、左手に居間やキッチンがあるパブリックエリアと明確な
ゾーン分けが可能となった。
このようにはっきりした考えが具体化された間取りは、完成後もやはり使い
勝手がよく空間的にも美しいと実感している。
(つづく)
