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メールマガジン 「建築家の自邸、満足と反省の物語」
2002/5/21(できるだけ毎週火曜日発行)
第3章 間取りを考える
3.光と風
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□ ご購読感謝
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みなさま、こんにちは。はじめまして。
ご購読いただきまして誠にありがとうございます。
このメールマガジンは、これから家を建てる方のために、建築家の私が自邸
を建てたときのエピソードを物語風にアレンジしたものです。
少しでもみなさまの参考になれば幸いです。
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■ 3.光と風
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間取りを決定する時、「何が一番のキーワードか」と聞かれたら、正しくは
「ケースバイケース」と答えるのだろうが、それでは物事は先に進まない。
私としては、これまでの経験から、敢えて答えるのなら、「光と風」としたい。
そして、このキーワードは、自邸を建築したことで決定的になった。
以前から、光と風を重要視して住宅の設計に取り組んできたが、建物が竣工し
たあとは、住み手の感想からその解答を推し量るしかなかった。それが今回は、
自分の五感で感じることが出来、推測から確信に変わった。
最近、やれ高密度だ、やれ高断熱だ、やれ省エネだと称して差別化が叫ばれ、
大手住宅メーカーを先頭に様々な工夫が提案されている。総じて「日本の住ま
い」の在るべき姿を真剣に考える点では、私にも賛同できる点は確かにある。
戦後の混乱期に、ただ延焼を防ぐために考案され、コストが安いことから盲
目的に全国レベルで普及した木造モルタル造を、戦後50年を経過した今日、本
当にこれで良かったのか、検証してみる時期でもあるのだ。
ところで5月のある日曜日のこと。開け放した窓から音も無く、ほほを撫で
るあの「そよ風」の気配を感じた時、一瞬ハワイの木陰に腰掛けた自分を想像
してしまう。そんな経験はありませんか。もうこれは、理屈抜きに、生き物と
しての快感に等しいですよね。
こんな経験を重ねる中に
如何にこの自然な快適さを住宅の中に取り込むか。
厳しい自然からは確かに身を守るとしても、その優しさまで排除していないか。
こんな疑問が私の中に生まれ始めた。
生き物として人間を見た場合、自然をコントロールするあまり、理想の環境
作りから逆行しだしたのではないか。特にこの首都圏と言う地域に限定すれば、
それ程過酷な気象条件とも思えない。最近の風潮でもある高密度だ、高断熱だ、
外断熱だと騒ぎ立てるのは、むしろ厚手のオーバーコートで子供達をつつんで
いるような気がしてならないのは、私の偏見なのだろうか。
私の住宅設計にとって、この光と風のテーマは、木造であろうと鉄筋コンク
リート造であろうと変わらない。特に通風という面では、密封度の高いコンク
リート造の住宅やマンションは、快適さを維持する意味で、より重要なのでは
ないだろうか。
風の流れが一番欲しいのは夏場である。夏に南風が多いと聞けば、風の通り
道は南北となる。とすれば、間取りを考える時、単純にこの風の道が出来るよ
うに出入り口や窓の位置も同時に考慮しておくべきだ。ただ、逆に冬場にはこ
の風の道は無用だ。建具を考慮して、閉じたり開いたりの機能が働く装置を工
夫することは、最低限の設計技術だろう。
光は想像以上に上から来る。特に夏場は真上に太陽はある。惜しいかな、本
当に直射日光が欲しい冬場には、太陽高度は低く、南の近い場所に隣家が迫っ
ていると昼間でも暗い室内空間となってしまう。それでも、もし上から光を取
り込むことが可能な状況であれば挑戦に値する。また、北側が多少なりとも空
いていれば光を取り込むための窓を設けることを勧めたい。窓は南に、と言う
固定観念は捨てるべきだ。北からの光は以外に優しく私は好きだ。
敢えて付け加えるならば、私の自邸では、2階が私のオフィスで、西面に床
から天井までの大きな1枚ガラスの窓を配している。その幅4.5メートルと言
えば想像していただけようか。住宅で在りながら一見、ブティクや洒落たオフ
ィスビルに似た外観は、来訪者を圧倒し続け、ある意味で私の計算どおりだっ
た。
ところが春に竣工し、夏に向かって時間が経過するにつれて、これが私をこ
んなにも悩ます事になろうとはー。午後3時を過ぎると決まって首筋から汗が
スーと流れ出す。しばらく我慢をしていると、次にベルトのあたりの皮膚の谷
間に生あたたかい湿気を感じる。ちょっと待て、ここはマニラではない筈だ。
顔を上げると隣地の建物の切れ間から、ガラスごしに刺すような西日が私を射
ていた。
以来、私は間取りを考える時、西日の存在を忘れたことは無い。
(つづく)
