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メールマガジン 「建築家の自邸、満足と反省の物語」
2002/6/25(できるだけ毎週火曜日発行)
第4章 建築構法の選択
1.木造・鉄骨造・RC造(2)
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□ ご購読感謝
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みなさま、こんにちは。はじめまして。
ご購読いただきまして誠にありがとうございます。
このメールマガジンは、これから家を建てる方のために、建築家の私が自邸
を建てたときのエピソードを物語風にアレンジしたものです。
少しでもみなさまの参考になれば幸いです。
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■ 1.木造・鉄骨造・RC造(2)
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私がリタイアして、もしこの高知に行くことになったら、やはり「土佐派の
家」に住みたいと思う。逆にこの都心で、しかも喧騒に悩まされるとしたら、
迷わず鉄筋コンクリート造にして、窓がすべて中庭に面する閉じた箱のような
家がいい。
これらを例にするまでもなく、建築の構法は、とても重要なことではあるが、
絶対これが良いというものはなく、むしろ住宅が建設される環境に素直に従う
べきものだと思う。そこに多少の個人の趣味、嗜好が加味されても許されるの
ではないか。住宅の分野でも世界に知れた名建築は、どれも周囲の環境に見事
にマッチしていて、構法も十分練られているものだ。
ところで、最近都心では防火地域として、住宅であってもRC造や鉄骨造し
か認められない地域が増えている。防災という面からみれば当然のことかも知
れないが、一見冷たく無機質に見えるコンクリートの外壁が連続する街並みを
想像すると、殺伐とした未来が見えるようで、本当に文明が進んでいるのか疑
問に思えてくる。
ただ、RC造の住宅であっても、内部に木材などを取り入れることで、暖か
さや優しさを感じる内部空間を実現した例も多い。外観でも、植栽の工夫など
により、建物に息吹を感じさせることだってできる。言ってみれば適材適所。
やりようはある。
また、ごく一般的な準防火地域では木造建築が可能だ。本来、木造建築の理
想は、深い軒のでた平屋だ。いつか小さな池の自慢のコイにエサをやりながら、
建蔽率10%ぐらいの、庵と言う名にふさわしいような木造住宅で余生を過ご
したい。木は本来、湿気等に配慮すれば、充分な耐久性はあるものなのだが。
都心の狭い敷地で、この本来あるべき姿を実現できない木造建築は、ハンデ
を背負っている。それでも一戸建ての住宅の場合、木造が多いのはどうしてか。
言ってしまえば、ただコストの安さのみで木造が採用され続けているようにも
見てとれる。たとえば売値の安さを競っている多くの建売住宅がその代表例だ。
木造イコール、安いという図式ができあがっているように思う。
さて、私の自邸の場合はどうだったか。話は簡単。敷地が借地権の場合、た
いてい「非堅固な建物に限る」という但し書き事項が入っている。私の場合も
例外ではなかった。したがって、無条件で木造建築物しか建てられない。
毎週土曜日の午前中に渡辺篤氏の「建物探訪」という番組があるのをご存知
だろうか。結構、人気番組らしい。この番組では、建築家の自邸が紹介される
ことも多いが、それなりに格好がついているのは決まってRC造だ。
実は自宅の設計を始めて、この番組に登場する夢を見た。取材を受けて雄弁
に語る自分の姿が、目が覚めて遠のいていく。建築家の自邸である。理想を言
えばコンクリートの打ち放しか、ガラスで身を纏った鉄骨造でなくてはカッコ
がつかないではないか。
前述のように、防火規制が厳しく、敷地にゆとりが無い場合の木造建築は、
デザイン的には分が悪い。木造の欠点を補うために、専門家として適切な処置
をすればするほどデザインの基本であるシンプルさから離れてしまう。
ところで木造と決まった時点でデザイン以外にも不安が残った。私達の敷地
は、幅員4メートルの私道の一番奥にあり、間口11メートルのうち、4メー
トルしか道路に接していない。敷地にゆとりが無いので建物内に車庫を確保せ
ざるを得ない。さらに、車を建物の中で反転させないと突っ込んだら最後、容
易には出られない。つまり、一階の間取りは、車の回転のために、ほとんど柱
の無い広いスペースが必要だった。従来の木造の構法でこんな建物が成立する
のだろうか。
構造設計者に相談してみると、計算上の荷重や地震時の耐力は一応基準値を
クリアーするらしい。しかし、経験的に一抹の不安は拭いきれないでいた。倒
れないにしても、長年の間に歪がくるのではー。「超高層ビルも数件こなして
きたこの私がこの程度のことで怯えてどうする。」
自分でも本当に専門家かと疑いたくなった。とても今手掛けている仕事の関
係者には語れない。その道のプロでもひとたび自分の事となると素人に戻るこ
とがあるという。まさにこれだ。妻の故郷の長崎では「情けなかー。」と言う
らしい。
(つづく)
