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メールマガジン 「建築家の自邸、満足と反省の物語」
2002/7/19(できるだけ毎週火曜日発行)
第4章 建築構法の選択
2.SE工法とは(3)
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□ ご購読感謝
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みなさま、こんにちは。はじめまして。
ご購読いただきまして誠にありがとうございます。
このメールマガジンは、これから家を建てる方のために、建築家の私が自邸
を建てたときのエピソードを物語風にアレンジしたものです。
少しでもみなさまの参考になれば幸いです。
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■ 2.SE工法とは(3)
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早速、後藤さんに「SE構法」の採用を伝えたところ、まず加盟店としての
登録が必要とのこと。なんと登録料だけで数百万円。「え、聞いてないぞー」
この頃から私は、納得のいく仕事をするため、住宅レベルの小規模な工事は、
職人のチームを作って、設計施工を始めていた。勿論、最初の頃は施工は工務
店に依頼していたのだが、現場へ行っても、職人とどうも意思の疎通が図れな
い。職人は、発注元の工務店の社長を通してくれと言う。
いままでいとも簡単にやっていたビルからすると住宅なんて...とたかをくく
っていたのだが、やってみてわかったのは、なんと住宅の細かいこと。手摺の
高さひとつで、あっという間にダサくなる。センスを売り物にしている私とし
てはガマンがならず、心配で連日のように現場へ通うことになった。いくつか
現場をこなすうち、勘と腕の良い職人だけが残り、直接その職人達に仕事を出
す工務店としての体制が出来つつあった。
「登録料といっても、工務店さんに対して、一旦受注して、途中でキャンセ
ルとなった場合の当社の保険みたいなものでして―。」
額に汗して後藤さんの説得が続く。いくら「SE構法」を推薦しても、施工の
ための登録料までSさんに負担させられない。結局のところ研究開発費として
私が負担することにした。
登録を済ませると、今度は施工技術の習得のために、岐阜県の工場近くで行
われる講習会に参加しなければならないとのこと。確かに新しい技術である。
昔からの在来軸組工法に慣れた技術だけでは現場で途方にくれる状況が想像さ
れる。泊り込みで専属の大工二人に行ってもらうことにした。勿論、交通費、
滞在費一切はこの私の負担となった。
S邸の具体的な設計に入る。通常、木造二階建て程度の建築なら、構造計算
は、この私でも数時間で終えられる。ところが、SEとなるとそうはいかない。
構造計算に信頼が得られるのがこの構法のメリットの一つなのだから文句も言
えない。しぶしぶ、専門の構造設計者に依頼すると、数日後に前金で数十万円
の請求書が届いた。
それでも、思わぬ出費はまだ終わらない。
「あのー、個別の案件につき、SE使用料がかかります。」
なに!これではまるで、悪徳商法のぼったくりではないか。後藤氏曰く、
「集成材や金物は原価に近い価格で提供しています。これは、私達の活動費み
たいなものでー」
今度は彼の首筋からも汗が滴る。とかく事業の立ち上げ時期はこうした創業メ
ンバーの頑張りに支えられているものだ。今、冷静に思い出してみると、彼の
粘り勝ちだった。一方、私としては、もし、この仕事だけでSE構法を止める
ことになったら割が合わない。不安を抱えながらのプロジェクトがスタートし
ていった。
「基礎の段階から自分達がいなければ無理ですよ」
講習会に参加した清水棟梁が言った。普通、基礎工事は鳶職の仕事と決まって
いる。基礎が完成してから大工が乗り込んでくるのだ。しかし、SE構法では
コンクリートの基礎の上に直接支持金物を置き、柱を立てていくので、その金
物の位置は誤差5ミリ以下の精度が要求される。吹きさらしの外部で、しかも
土工事が主体の基礎工事に、この精度を要求するのは確かに無理がある。
炎天下でのS邸の基礎工事は鳶職と大工が入り混じる賑やかな光景となった。
清水棟梁は、コンクリートを流す前に、墨壺と指し金で柱の位置をミリ単位で
表示していく。もし万一、これが間違ったら、一巻の終わりである。そのほか
何かの不具合が生じれば、その責任はすべて私にある。祈る気持ちでその作業
を見守った。その点、現場で多少の修正がきく在来軸組工法は、そういう意味
では確かに優れている。広く全国に普及した要因の一つに違いない。八月の太
陽は汗だくの作業員達を容赦なく照りつけていた。
その後、出来上がったコンクリートの基礎の上に、柱を直接支える金物を置
く段階になって、やはり二箇所の狂いが見つかった。コンクリートを打設する
時の圧力でボルトがやや傾いたようだ。対策としては金物を再度加工すること
にした。それにしても手間がかかる。
SE構法、それが施主の希望であれば、もっと早く事が進んだのは事実。任
された責任感から、私の決断は確かに遅れた。ようやく自分で確信を得て、工
事の契約をしてからも、構造計算や施工図のチェックなどで二ヶ月近く更地の
状態が続いた。
後で聞いた話、S氏はこの頃イライラしていたらしい。可児さんに全てお任
せしたもののずいぶん時間が経過している。新しく購入した敷地は、ちょうど
毎朝のジョギングコースの途中にあり、今か今かと待ち遠しい。近くの建売住
宅は、ついこの間解体したのにもう基礎も終わって柱も建っている。
「おい、まだ何も出来ていないぞ。いったい、いつ始まるんだ。」
「さあねえ、可児さんに聞いてみたら。」
毎朝の夫婦の会話だったらしい。
いよいよS邸の上棟の日を迎える。朝早くから後藤さんの姿があった。彼も
心配だったのだろう。
(つづく)
