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建築家の自邸、満足と反省の物語

雨との戦い

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  メールマガジン 「建築家の自邸、満足と反省の物語 NO.37」

  2003/7/8(不定期発行)

  第6章 外装

   2.雨との戦い


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□ ご購読感謝

みなさま、こんにちは。
ご購読いただきまして誠にありがとうございます。

このメールマガジンは、これから家を建てる方のために、建築家の私が自邸を
建てたときのエピソードを物語風にアレンジしたものです。
少しでもみなさまの参考になれば幸いです。



■ 2.雨との戦い


 高知県の親友、太田君の話を思い出していた。以前話題にしたことのある建
築家である。彼は「土佐派の家」と題して、その地域の風土に則した独特のス
タイルを確立し、建築雑誌でもよく取り上げられている実力者だ。彼の言によ
れば「可児ちゃん達の作っているモダンで格好いい家は、高知では直ぐにダメ
になる。」のだそうだ。よく台風の直撃を受けるこの地方の豪雨は、はるかに
我々の想像を超えているようだ。幸い、その場に居合わせたことは無いのだが、
学生時代に6年以上も東京に住んだ経験のある彼がそう言うのだから信憑性が
ある。

 我々が木造で住宅を作る場合、高知でなくても、広く軒の出た家は安定感が
あり、それだけで美しいと思う。日本の気候風土から考えても理にかなった形
かもしれない。ただこの首都圏では、敷地の制限から、悲しいかなそれが許さ
れないのが実情だ。しかし、それをいいことに、軒の出を無くしてしまったり、
庇まで省略した箱状の住宅ばかりが建築雑誌に紹介されている現実には同調で
きないでいる。

 確かに、わずかな軒の出なら、いっそ無い方が格好がいい。どうも建築家と
名乗る人たちの間では、建物は彫刻作品として捉えられ、それに後で建築とし
ての機能を入れ込んでいく方法が定着しつつあるようで、どうもこの傾向はし
ばらく続くようでもある。

 あの薬師寺の再建で有名な、故西岡棟梁の手記には「木造で二階建てを作る
のなら、一階と二階の間に庇をぐるりと廻すのが良い。」と書かれていたと記
憶する。実際にそうしてみたら、若い建築家の人たちには滑稽な姿に映るのか
もしれないが、このごろの私には、あれだけの人がそういい残すのだから、一
蹴することのほうが、もしかしたら滑稽なのかもしれないと思うようになって
いる。

 建築の専門家なら誰しも同じ意見だろうが、確かに木造建築は水に弱い。特
に雨水が浸入しようものなら、一巻の終わり。コンクリートの建物の場合、屋
上の防水さえきちんと施工されていれば、多少の雨を撥ね付けてしまう力強さ
がある。ところが木造の場合は、雨水の浸入についてより注意深い施工が要求
されるし、直接雨のあたる場所の材料は吟味されなくてはならない。

 昔の映画に、よく雨モレをバケツで受けるシーンが登場するが、あのように
はっきり場所がわかって、次の日に乾いてしまうようならともかく、天井裏や
壁の中に沁みて、いつまでも乾かない状況を作ってしまったら建物の寿命は想
像以上に短いと推測される。あらゆる部分で合板を使用している最近の住宅は
特に要注意と言えよう。

 私も自邸の設計で、最後まで悩んだ「屋根をどうする。」ということについ
ては、夏の暑さ対策に加えて、この雨仕舞のために軒の出や庇を採用すべきか
否かの決断に迷いがあったからに他ならない。雨の日に傘を差して歩くのが快
適か、頭からカッパを被って歩くのが快適か。自分を建物としたらどちらが嬉
しいのだろう。多分私が建物自身だったら、「傘をさして。お願い。」と言う
ところだろうが、建築家の称号を捨てられないでいるもうひとりの私としては
結局最後の最後まで結論が出せずにいたのだった。


(つづく)

 
 
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