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メールマガジン 「建築家の自邸、満足と反省の物語 NO.38」
2003/8/14(不定期発行)
第6章 外装
3.外壁は何がいいか(1)
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□ ご購読感謝
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みなさま、こんにちは。
ご購読いただきまして誠にありがとうございます。
このメールマガジンは、これから家を建てる方のために、建築家の私が自邸を
建てたときのエピソードを物語風にアレンジしたものです。
少しでもみなさまの参考になれば幸いです。
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■ 外壁は何がいいか(1)
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屋根が決まると、次に外壁の選択となる。木造の場合、そうは言っても重い
ものは本能的に避けたいと思うのは、私だけだろうか。よく言われることだが、
木は生き物である。いくら紙上での構造計算で許容範囲と断言されても、人間
と同じ生き物に何十年もの間、過分な重量のコートを纏わせるのは酷な気がし
てならない。とにかく、有機物としての木の骨組みには、石や焼き物のタイル
張りは似合わないと思った。(実はこのあたりに私の心の優しさが滲み出てい
るのだが)よく住宅展示場で、レンガ積みに似せたタイルを貼ったモデルハウ
スを見かけるが、どうも西洋の物まねの感がして好きになれない。
しかし、タイルの産地で有名な岐阜県多治見市の高校を卒業している縁から、
少しだけ贔屓目に見ると、タイルを貼った場合は外壁の経年変化が極めて小さ
く、目地の汚れさえ辛抱すれば、二十年くらいはメンテが不要ではないかとさ
え思われる長所もある。このことを善しとして外壁にタイルを張る場合は、少
なくともデザイン的にレンガ積みの手法を真似て貼るか、アントニオ.ガウデ
ィの作品に見られるように、堂々と「表面にだけタイルを貼っています。」と
する潔さが欲しい。
一方、最近の建築雑誌には、無機質な素材がもてはやされている傾向がある。
特に、凹凸のついた金属の板を張っている写真をよく見かける。一般にはアル
ミスパンドレルとかガリバリウム鋼板とか呼ばれるもので、ここ数年その種類
も増えてきた。昨今、公共建築物をはじめとして雑誌に掲載される建築の多く
が、重厚な雰囲気から脱却して、より軽く透明感のあるものへ移行している傾
向にある。ある種の流行現象ともとれるのだが、これが住宅レベルにまで影響
し、金属パネルとガラスの多用にに拍車をかけていると思われる。
但し、我が自邸では、金属の宿命である錆びが発生して、まだらになった十
年後の無残な姿を想像すると、とても全面的に採用する気になれなかった。し
かし、確かに現代的で都会的なハイセンスさが演出できる魅力的な素材である
ことは否めない。そんな理由から、遂にここで私の弱点が露呈してしまった。
一番良く人目につく西側の壁面にほんの少しだけこのアルミパネルを張ってし
まったのだ。「いかにも木造です。」という印象を避けたかったからだ。
ところが、時間が経ってよくよく考えてみれば、この自邸のデザイン的なア
イデンティティーは、いったいどこにあるのだろうか。頑なにまでコンクリー
トの素材感にこだわりつづけ、とうとう世界にまで名を馳せたあの安藤先生に
は遠く及ばず、良いと思うとつい手の出てしまう自分の未熟さがほとほとイヤ
になる。所詮、自称建築家とはこんなものか。
外壁は法的に不燃材料が義務付けられているので、残るは左官材料かセメン
ト系のサイディングが選択肢に入ってくる。いつもいっしょに仕事をしている
大工達に聞いてみると、皆一様に「そりゃ、木造には塗り物ですよ。第一、品
格が違いますがな。」と言う。確かに、自然の土を塗りこんで丁寧に仕上げら
れた左官の仕事は、年月を経て古びてきてもそれなりに味が出て、陳腐さを感
じさせない。
しかし、それは小舞と呼ばれる竹組みからはじまる伝統的な左官仕上げを指
している。延焼を免れるために戦後の復興期に全国的に普及したラスモルタル
下地の左官仕上げは手間を簡略化した結果、性能的に短所も多い。まず、気温
の変化による収縮や地震の衝撃で、どうしても壁にクラックが発生し、そこか
らの漏水がカビを発生させたり、剥離の原因となる。
さらに構造体の柱や梁を外側からスッポリ被ってしまうことになり、早い話
ムレの状態を作り出すことになる。カラダに良い訳が無いことは、家にとって
も同じこと。これらを防ぐため、木組みを外部に露出させて、一枚のかべの面
積を少なくする知恵は昔からあったが、防火規制と言う法律のおかげで、よほ
ど敷地が広くないと実現できない。
住宅に限らず最近の建築では、左官仕上げが衰退し、水を使わない乾式工法
が主流になってきているのは事実だ。おそらく左官職人も激減しているに違い
ない。とは言うものの、木造で多少予算に余裕がありそうな立派な住宅は、き
まって左官仕上げになっている。
なんとか生き残った左官材料メーカーも新製品の開発を余儀なくされている
ようだ。この私が最近気に入っている左官材料がある。珪藻土と呼ばれる土を
主体に、ワラやひる石など数種類の異なった骨材を混ぜてイイ味を出すことが
出来る。伝統的な落ち着きの中に、ややモダンな感覚が表現できるのが嬉しい。
ただし、高い。材料自体もさることながら、左官技術にノウハウが必要なの
だ。最初に採用した時は驚いた。ほんの数平米塗るために、なんと8人の職人
が現場にやってきた。普通なら2人か3人で済むところをだ。後からの請求を
心配しながら、その工程を見守ったのだが、「ああ、これなら高いのも当然」
と直ぐに納得した。
珪藻土は、呼吸する性質があるのが魅力だが、やはりクラックに弱い。それ
を補うため外壁全面に薄くて丈夫な布を貼る。この作業と、土の乾きをコント
ロールして表情を均一に保つ作業のためにこれだけの人数が必要だったのだ。
左官もここまで手間をかければ、外壁材として合格点に達する。
左官材料の中ではセメント系の無機質なものが一般的だが、この珪藻土や昔
からの漆喰なんかは、その後の変化を見ていると有機質のような感じがして、
それゆえに木造住宅には似合うのかもしれない。確かに木造の場合、鉄筋コン
クリート造などの建物に比べて、経年変化は著しい。いつまでも新築の時の姿
を維持するのは難しい。しかし、有機質の性質をうまく利用することで、新し
さに変わる別の良さを感じられる状態を作り出すことが可能なように思えてい
る。
(つづく)
