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建築家の自邸、満足と反省の物語

外断熱について(2)

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  メールマガジン 「建築家の自邸、満足と反省の物語 NO.41」

  2003/12/5(不定期発行)

  第6章 外装

   4.外断熱について(2)


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□ ご購読感謝

みなさま、こんにちは。
ご購読いただきまして誠にありがとうございます。

このメールマガジンは、これから家を建てる方のために、建築家の私が自邸を
建てたときのエピソードを物語風にアレンジしたものです。
少しでもみなさまの参考になれば幸いです。



■ 外断熱について(2)


最近売れている(らしい)「いい家がほしい」(松井修三著)という本を買
ってみた。内容は、とにかく外断熱の優位性を主張したものだったが、その第
一印象は、あまりの断言口調に不快感も伴った。つい「それはあなたの勝手な
意見でしょ。」という感じさえ受けてしまったのは私だけだろうか。本来同じ
分野の人間だから、どちらかと言えば贔屓目になるところなのだが。中には同
じ技術者として、疑問が残る記述も多く、ここまで断言されるとちょっと引い
てしまう感があった。

 だいたい、「いい家」と感ずるのは、個人の主観によるものが多い。どこに
満足の尺度があるのかは千差万別と言ってよい。立地条件や建築コストも影響
するし、プロから見てどうしようもない住宅であっても、そこに住む人が満面
の笑みをたたえていれば、まさしくそれは「いい家」に違いない。(意外とこ
のパターンは多いのだが―)したがって、外断熱の効果による居心地の良さは、
「いい家」のほんの一つの要素に過ぎない。ただ、まさにこれから我が家を手
に入れようとする人たちにとっては、「いい家」という言葉は見逃すことがで
きない。こうしたタイトルの書物が複数店頭に並ぶのもわかるような気がする。

 ところで、勿論私の自邸の場合も、この外断熱を採用するかどうかで迷うは
めになった。最初のうちは、実験も兼ねて、是非やってみようと考えていた。
ところが一通りの設計を終えて、工事会社に見積を取った時点でぐらついた。
正直な話、はっきり言って予算の問題が立ちはだかったのだった。

 一般的に住宅を建築する場合、余剰資金がある人はそう多くはない。特に首
都圏で、しかも土地から取得しようとする人達にとっての家づくりは、限られ
た予算の中で、自分の希望がどこまで叶えられるか挑戦なのだ。この私の場合
とて例外ではない。妻には最初から「全体のバランスを考え、予算配分をきっ
ちりしてくださいね。無い袖は振れませんから。」と何度も釘を刺されていた。

 私はデザインのセンスにはチト自信があるのだが、予算監理は大の苦手。高
層ビルなど、ある程度の規模の仕事になると、予算監理は施工者となるゼネコ
ンが、イヤと言うほど徹底して管理してくれる。しかし、今回はゼネコンはい
ない。妻の言葉に、恐る恐る仕上げ材料などを決めていった。最後にここで、
さらに手間のかかる外断熱工法を採用すれば、予算オーバーとなるのは確実だ
った。

 そもそも北海道のような極端な寒冷地の場合であれば、構造体そのものを保
護する意味でも、何にもまして真っ先に外断熱工法を採用したいところだ。し
かし、比較的温暖なこの関東地方で、最優先で外断熱工法に予算を計上するの
はどうしたものかと迷いはじめていた。原理としては間違い無いところだが、
施工の良し悪しによってもその効果は大きく左右される。また一方では、夏の
暑さ対策や屋根の断熱だけ見れば、内断熱の方が優れているとの意見もある。
さらに、費用との相対効果を問われると、私自身盲目的な「外断熱」信奉者に
はなれないでいた。

 そんなこんなで、踏絵的存在の自邸の設計では、最後の最後まで外断熱仕様
にすべきか迷った。まさに、生徒の質問に答えられないでうろたえている教師
の心境だった。新刊の雑誌の中に「欧米では、コンクリート造の建物までが外
断熱だ。」との記事を見つけると、「ホントかな」と疑いつつも、ますます頭
の中が混乱してくる。果たして、仕上げ材料の質を落としてでも、そうすべき
なのか。結局のところは自分で判断するしかなかった。

 私なりの最終結論は、「外断熱を止める。」だった。理由は予算配分のバラ
ンスから考えて、無理があると判断したからだ。技術者にありがちな融通性の
無さも手伝って、もし外断熱を採用すれば、外壁はもちろん、基礎や屋根まで
徹底して外断熱仕様としたくなる。アパートを併設した私の自邸では、外気に
面する壁面は半端な量ではない。その手間と費用は考えるだけでも身の毛がよ
だつ。かと言って、費用捻出のために、仕上げ材や設備機器などのグレードを
落とすのもイヤだった。私にとって「いい家」とは「全体としてバランスのと
れた家」なのだ。

 ちょうど外断熱を諦めかけていた頃、サイテ゛ィングのメーカーから、「通
気工法のお願い」という異例の書類が届いた。外断熱が注目を浴び始めた同時
期から、この「通気工法」も専門家の間で話題となっていたので、その内容は
一応理解していた。しかし、こうして改めて念を押されるとまったく無視もで
きない。要は内断熱を採用した場合の弱点である内部結露を軽減するため、断
熱材と外壁との間に空気が通う隙間を作ろうとするものだ。

 これまで構造体にぴったりくっついていた外壁材を、ほんの1、2センチ離
してやることで、外気が足元から屋根に向かって上昇しながら、ついでに湿気
を取り去っていく。こうすればいつかの老いた棟梁が心配していた「ムレた状
態」は相当改善されるに違いない。

 この方法は、私自身これまでの住宅設計でも、しばしば採用してきたもので、
予算的にも何とか呑める範囲だった。「よし、最低でもこれだけはやっておこ
う。」腹は決まった。外壁は大半がサイディングだったので、構造体から少し
浮かせて取り付ける方法は、胴縁と呼ばれる垂直方向の木材を取り付けるだけ
で意外と簡単である。さらに釘打ちでなく専用金具を使用することで、見た目
にも美しい。他人からはほとんど見られないことは承知ながら、建築家として
のプライドは一応満たされる事になった。


(つづく)

 
 
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