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建築家の自邸、満足と反省の物語

壁材を選ぶ(1)

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  メールマガジン 「建築家の自邸、満足と反省の物語 NO.45」

  2004/5/4(不定期発行)

  第7章 内装

   2.壁材を選ぶ(1)


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□ ご購読感謝

みなさま、こんにちは。
ご購読いただきまして誠にありがとうございます。

このメールマガジンは、これから家を建てる方のために、建築家の私が自邸を
建てたときのエピソードを物語風にアレンジしたものです。
少しでもみなさまの参考になれば幸いです。



■ 壁材を選ぶ(1)


「ホテルのような家」づくりをテーマにしたことから、壁の材料は最初から
クロス貼が頭にあった。ホテルの客室では、壁、天井ともクロス貼が採用され
るのが一般的である。しかも、その後のメンテを考えて、汚れが着き難いビニ
ールクロスが多用されている。最近では、さすがに一流ホテルともなると、こ
のビニールクロスの安っぽさが嫌われ、逆に高級感を演出するため、敢えて汚
れやすい織物調の布クロスを貼っているところも多くなっている。

 しかし、ホテルのような家だからといって、内装の中で最もよく目に付き、
占める面積も大きい内壁は、すべてクロス貼でよいのだろうか。最近では「呼
吸する壁」とか言って、漆喰や珪藻土が何かと話題になっている。何も考えず
にクロス貼りというのは、安易な気がして躊躇された。余談だが、私の事務所
には、厚さ30センチもある壁紙の見本帳が常時3冊は存在している。どれも中
身は似たり寄ったりなのだが、メーカーが定期的に送ってくると、すぐさま捨
ててしまうのも気が引けて、ついつい床に積んでおくことになる。大金をつぎ
込んで作っているメーカーには悪いのだが、急いでいる時などによくつまづい
たりして、我事務所では嫌われ者の部類に属する。

 住宅に限らず建築の設計をしていると、大抵どこかにクロスを貼ることにな
る。最近流行のガラスを多用した商業ビルや事務所ビルの場合にも、クロス貼
やペンキ仕上げのところがどうしてもついて廻る。具体的にクロスを施工する
のは仕上げに入る最終段階なので、設計する時点で具体的なメーカーや品番を
決めておくことは少ないのだが、下地の問題や窓枠、建具の色合いとの調和が
大切なので、暖色系か寒色系、洋風か和風か、ぐらいは見当をつけておかねば
ならない。

 今回も例の見本帳を床に並べてパラパラとページをめくってみるが、いつも
のことながら「なんか冴えないなぁ。」とため息が出てくる。確かにどのメー
カーも特徴がなく、ここだけの話、これまでの仕事の中で、クロスを「絶対に
これしかない。」と自信をもって指定したことは今だかつて一度も無い。それ
に引き換え、外人デザイナーが日本のホテルのためにプレゼン段階で持ってく
る壁紙のサンプルは、そんな私も思わず「うーん。」と唸りたくなる色合いの
ものが数多くあるから悔しい。こうした壁紙のほとんどはその名のごとく紙の
上に印刷されていて、防炎加工が施されていないので、ホテルではそのまま採
用することは困難であるにせよ、日本のメーカーももう少しセンスアップをお
願いしたいものだ。

 ところで、クロス貼りについて心配なのはシックハウス対策にどう影響する
かという点だ。一時、新築の家で吐き気や、めまいなどがおこるということが、
マスコミにとりざたされた際、幸い、一度もこのようなクレームをいただいた
ことのない私も不安になり、現場で職人たちに聞いてみたことがある。私は、
クロスそのものよりは接着のための「のり」の成分が怪しいとふんだのだが、
職人たちからは、「主成分はデンプンなんだから大丈夫じゃないの。」程度の
答えしか返ってこなかった。その「のり」を触ってみたり、匂いを嗅いでみた
りしたが、確かに化学薬品には見えず、デンプンらしい優しげな表情も手伝っ
て、私としては無罪放免としてしまっていた。メーカーに問い合わせてみても、
「大丈夫です」としかかえってこない。

 しかし、ここにきてようやく真相が見えてきた。最近内装関係の仕事で知り
合った表具師の岩井さんの言によれば、これまで「のり」の防腐材として、あ
るいは安定剤としてホルマリンが混入されていたらしい。その含有量の多少に
よっては人体への影響があったと推測はできる。しかしこの問題が取りざたさ
れて以来、各社とも改良を加えているようであるし、このほど国土交通省が新
しくホルムアルデヒド放散等級の認定を設けたことにより、その手の雑誌に書
かれている程、神経質になることも無いのではないかという気がする。

 またまた余談になるが、木造建築の場合、基礎から1メートルぐらいのとこ
ろまで、白蟻予防のための液体を塗布するのだが、これがすごい刺激臭で、塗
っている職人も日本手ぬぐいをマスクがわりにしていた。確かに白蟻に効くか
もしれないが、人間にも効く?気がしてすぐにやめさせた。後日刺激臭の少な
いものを職人が探し出してきたが、申し訳なさそうに「少し高い」のだという。
高いも何もない、職人も住む人も体あってのモノダネだ。

さて、クロス貼りの弱点と言えば出隅にあると言える。角に何か物をぶつけ
たり、いつも手で触ったりしているうちに汚れ擦り切れてくるのはどうしよう
もない。さらに、そこだけの補修が効かないのもクロスの弱点だ。そう考えた
結果、自邸では個室だけ、つまり寝室や子供室、母親の部屋といった出隅のな
い部屋の壁だけクロス貼とすることに決めた。四角い部屋だから内側には出隅
ができない。個室にクロス貼は、コストから考えても妥当な判断だったと今で
も思っている。

 具体的には、寝室のクロスはベ-ジュの布っぽいものにして、天井はオフホ
ワイトのペンキ風。ホテルの客室の典型的なスタイルだ。子供室は、蓄光クロ
スと言って、夜電気を消した瞬間、蛍光色の模様が浮き出るもので、子供達の
ご機嫌をとった。母親の部屋は、やはりべージュの麻クロスとし、天井も同じ
もので貼り上げた。ちょっと和風のにおいが漂い面白い効果が出ている。麻ク
ロスとは、細いマニラ麻が横方向に織り込んであるもので、やや高価だが、そ
の風合いが実にいい。最近ではパークハイアット東京をはじめ、名だたるホテ
ルの大半がこの麻クロスを使用しているのも見逃せない事実なのだ。


(つづく)

 
 
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