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メールマガジン 「建築家の自邸、満足と反省の物語 NO.53」
2005/1/21(不定期発行)
第8章 設備の大切さ
1.電気と照明(2)
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□ ご購読感謝
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みなさま、こんにちは。
ご購読いただきまして誠にありがとうございます。
このメールマガジンは、これから家を建てる方のために、建築家の私が自邸を
建てたときのエピソードを物語風にアレンジしたものです。
少しでもみなさまの参考になれば幸いです。
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■ 1.電気と照明(2)
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さて、妻に任せたコンセントの位置図をみて驚いた。まあ、あるはあるは。
ここぞと思われる場所には、ためらいなくコンセントの記号が書き込んである。
大手ハウスメーカーの標準仕様書に明記されている「各部屋の対角線上に2箇
所」という常識は彼女には通用しないらしい。「だって、一箇所は必ず家具で
ふさがれてしまうでしょ。」の返答に、「なるほど。的を得たご指摘」と感服
せざるを得なかった。
部屋以外では、息子のケイスケが全速力で走る長い廊下に、4メートル毎にコ
ンセント設置されている。掃除機のコードが容易に届く距離らしい。さらに、
カーペット敷きの階段の踊り場にも掃除用が忘れられていないのはさすがだっ
た。
平面的に照明やコンセントの位置図が完成すると、次にそれを取り付ける高
さを書き込んでいく。この高さが重要なポイント。特に、壁に取り付ける照明
器具は、数センチ単位でその印象がまったく変わってくるから要注意。
また、家電機器が置かれる場所では、コンセントの位置が遠く離れていると、
コードがまる見えとなってしまい見苦しい。つまり、この配線が行われる時点
では、ほぼ完成した状況が見えていないといけないのだ。ところが、長年経験
を積んだ私にも、このあたりの計画は確かに難しい。
木造の場合は、配線が終わった後でも、仕上げ工事の前なら多少の位置の変
更は容易だが、コンクリート造ともなると事実上無理と言うことになる。実際
のところ、私は設計監理を担当するどの現場にもこの時期に度々足を運んで、
自分の目で確かめた上で、位置の微調整を行っているほどだ。
しかし、一度配線した箇所の変更ともなると、職人にとっては意外と面倒な作
業となる。「えー、ったく。もっと早く言ってくれなくちゃ、先生。」
この時の職人のこわばった横顔が私はいつも怖いのだが、このひと手間と勇気
が後で泣かない秘訣なのだ。
コンセントに関しての注意点として、エアコンは勿論、ドライヤーとかトー
スターなどのように熱を発生する器具を使用する場所に限っては、ブレーカー
から直接、独立の回路で配線しておくこと。これを見逃すと、同時使用の際、
頻繁に停電してしまい、その度にブレーカーの位置まで、暗闇の中を手探りで
たどり着かねばならなくなる。
風呂から上がって、ドライヤ―のスイッチを入れた瞬間にヒューズが跳ぶ。
隣の洗面所で洗濯物の乾燥機が廻っていたのだ。バスタオルを腰に巻きながら、
暗闇の中を、キッチンの隅にあるブレーカーまで辿り着かねばならない。時々
テーブルの角で腰を強く打ったりして「えいっ、くそっ、またか。」私はこう
した腹立たしい経験を、今まで住んでいた古家で何度味わったことか。「回路
をケチらない。」これは、建築家としてではなく、ひとりの庶民として身体で
会得したノウハウである。
しかし、こんなにたくさんコンセントを取り付けて工事費は大丈夫なのか。
心配になって、電気工事会社の社長に聞いてみた。社長曰く「コンセントの機
器自体は安いものだから、一度に工事が出来るのならたいしたことはありませ
ん。まあ、先生のお宅でもあるし、ハハハ。」「ただし、後での追加や変更は、
たっぷり経費をいただきますよ。」ということでまあ一安心だが、念を押され
たように追加や変更は、施主と施工者の双方にとって良いことではないらしい。
しかし、おおよそ、心得た工事会社に先手を打たれ、施主が泣くことになるら
しい。
一方、2階の私の事務所ではBGMを流すために、アンプからスピーカーま
での配線を壁の中に隠蔽することにした。この工事の途中に職人から「ご自宅
の方は必要ないんですか。」と何気なく聞かれ、「それじゃ、お言葉に甘えて」
と、食堂の部分にも同様の配線を追加してもらった。これは、この時気付いて
本当に良かったと思っている。
そもそも、これまでの古家では、食事の時間に音楽を聞くなんてことは想像す
ら出来なかった。なにしろ居間兼食堂兼子供部屋だ。雑多な物があふれスピー
カーのコードなんかが露出していても全く気にもならなかった。
ところがである。新築後の我が家ではどうだろう。窓辺に花が飾られ、食堂に
は観葉植物以外余計なものは何ひとつ無い。そして、テーブルの上にはランチ
ョンマット。食事タイムには必ずBGMが流れる夢のような生活が待っていた。
ここではコードの一本も無作法に見える。人間、変われば変わるものだ。
(つづく)
