電気と照明(3) - 設備の大切さ - SE工法、重量木骨、注文住宅なら一級建築士事務所 QUEST クウェスト

建築家の自邸、満足と反省の物語

電気と照明(3)

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  メールマガジン 「建築家の自邸、満足と反省の物語 NO.54」

  2005/1/26(不定期発行)

  第8章 設備の大切さ

   1.電気と照明(3)

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□ ご購読感謝

みなさま、こんにちは。
ご購読いただきまして誠にありがとうございます。

このメールマガジンは、これから家を建てる方のために、建築家の私が自邸を
建てたときのエピソードを物語風にアレンジしたものです。
少しでもみなさまの参考になれば幸いです。



■ 1.電気と照明(3)


さて、もう20年以上も前のこと、私が故白井晟一先生の建築作品に傾倒して
いた頃、氏の「光で壁を洗う」という手法に感激して、「これはイタダキ」と
ばかりに自分の仕事に盛んに取り入れてきた秘法がある。それは自然光や照明
の光を使い、ある一面の壁だけを明るく照らし出すことである。この単純な方
法の何が良いかと言って、実はこれほど空間をドラマチックに演出できる方法
もめずらしい。

さらにその後、ホテルの建築に携わるようになって、この「光で壁を洗う」手
法は、ますます必須アイテムとなっていった。と言うのも、ホテル建設の仕事
で交わる外人のインテリアデザイナーのほとんど全てが、この手法を使いたが
るのだった。

 そもそもホテル建築では、照明計画が最重要ポイントだと私は断言できる。
勿論、常識的な人や物の動線、バックヤードの施設計画など、ホテルに必要な
基本計画が適切に処理されていることが前提ではあるが。つまり、機能的にい
かに優れた設計がされていても、出来上がったホテルの施設全体が、利用者の
気持ちを高揚しない空間では評価に値しない。それどころか、やがて経営的に
も苦しくなっていくことをこれまでの経験で学ぶことが出来た。

 では、どうしたらいつまでも人気が失せず,品格や華やかさを保ち続けられ
るホテルとなるのだろうか。答えは簡単ではないだろうが、内装に限って敢え
て断言すれば、成功しているホテルのどれをとっても、空間の照明効果が憎い
ほど上手く仕上がっていることに感服させられる。高価な材料を使用しなくて
も、明かりのコントラストで奥行き感のあるドラマチックな空間に変身させる
テクニックが確かにあるのだ。

さて、具体的に住宅の場合、「光で壁を洗う」にはどうしたらよいのだろか。
話は簡単。まず、安易に部屋の天井の真中に、アクリルで覆われた大きな蛍光
灯の照明を取り付けないことだ。これをしたら最後、外人デザイナーが「オオ、
マイゴッド」と顔を覆うであろう、味も素っ気もない乾いた空間の誕生となる。

しかし、この天井からの光がないと、暗い室内になることも事実。それが心配
な時は、天井にダウンライトを控えめに配置することは許されよう。そのあと、
壁面にブラケットと呼ばれる器具を取り付ける。この場合、多少光が透過して
も良いが、直接目に飛び込んでこないものがよい。このブラケットは背後の壁
と天井を照らすことになり、間接照明の効果で、柔らかい光が室内全体に広が
っていく。

欧米のホテルや住宅によく見られる花瓶に傘を被せたようなスタント゛型の照
明器具も、光を背後の壁や天井に反射させて柔らかい光に変えている点で、ブ
ラケットと同じ効果を出している。

更に、専門的志向の場合には、壁と天井、または壁と壁との間に隙間を作って、
そこに光源が見えないように豆電球を仕込み、あたかも光が差し込んできてい
るような印象を演出する間接照明が「光で壁を洗う」本命だ。最近では、ショ
ールームや飲食店のような演出された空間には無くてはならないテクニックと
なっている。

ところが、この優れた照明方法にも弱点がある。「なにも住宅でそこまで」と
か「電気代がもったいない。」と言われる事だ。私は「それを言っちゃあオシ
マイヨ」と開き直りながら、自邸の場合は居間やダイニング、皆が通る廊下な
どにこの方法をとりいれた。また天井照明だけでなく、壁にブラケットを取り
付けたのは、寝室、子供部屋、洗面室、さらに浴室、トイレにも及んだ。果た
してその結果は。

引っ越したその夜「まるでホテルに居るみたい。」家族の皆が驚いた。明るい
所とそうでない所のコントラストが効いて、素人にも空間の奥行き感を感じる
ようだ。「子供部屋はムードより明るさでしょう。」とばかり天井から40Wの
蛍光灯を2本も取り付けたが、冷たい蛍光灯の光を壁付けのブラケットから洩
れる白熱球の暖かい光がやわらげていてホットする。耳元で妻曰く「大成功よ、
アナタ」だって。

さて、心配した電気代はどうだったか。住み始めて半年も経った頃、恐る恐る
引き落とし口座を垣間見た。なんとこれが予想の半分ほどで納まっているでは
ないの。引っ越したのが3月。冷房や暖房が必要のない中間期だったことを差し
引いても、我ながらプロとして誇りが燃える熱い瞬間だった。

その理由を推測してみると、照明器具自体、蛍光灯は勿論のこと白熱灯も40W
や60Wがほとんどなので、エアコンなどと比較して、長時間使用しても、電気
代はそれほどでもないこと。また、私の自邸の場合、住居部分が3階にあるこ
とで日当たりもよく、おまけに天窓が4台も設置してあるので、照明を点灯す
る時間が少ないことも影響しているのだろうということで決着した。

新居に移って数年の間に、電気設備関係で手直しをした所を揚げてみる。最初
に不備を感じたのは防犯設備だった。元来私は性善説である。岐阜県可児郡可
児町。平屋だというのに、夏の寝苦しい夜は網戸だけで寝入る平和な田舎育ち
である。

自邸でも、せいぜい玄関ドアに鍵を2個つけただけで済ませてしまった。ところ
が、併設したアパートに3人のうら若き女性が入居してから眠れなくなった。

外観のデザインとして好ましくないので、郵便ポストを建物の少し入った場所
の壁に埋め込んだのがいけなかった。最近この駅近の地域では、ポスティング
と言って、宣伝チラシを配るアルバイトの兄ちゃんたちがやたらと多く見受け
られるようになった。多い日では、その数、数十枚。一日でポスト一杯になる
ほどだ。

いかがわしい内容のチラシも多い。偏見でもあるのだが、彼らは一様に動作が
緩慢で怪しげである。そんな奴等が何んの断りも無く我が家の玄関先をうろち
ょろする毎日が続く。このチラシの数から判断するに一日に何十人もなのだか
らたまらない。そのうち誰もが痴漢や空き巣狙いに見えてきた。「あなた下手
に注意とかしないでね、最近の若者は怖いから。」妻の言葉がさらに続く。
「我が家には、幼い子供達もいるんですよ。」

そんな矢先、偶然にも数軒先のワンルームマンションで、痴漢騒ぎがあった。
駅前交番の警察官からも注意を促す伝言があった。発表していないだけで、こ
の甲州街道沿いはその手の犯罪が多発しているらしい。「おいおい、早く言え
よ」とばかりに不安が増殖していった。

年頃の若い女性3人に、幼い子供たち。ポストの目の前にあるガレージには愛
車ジャガーが控えている。「いや、買ってから13年のポンコツですよ。」と
貼り紙しておくわけにもいかない。この新しい家に外車。どう見ても多少はリ
ッチな雰囲気が漂って、いつの間にか犯罪の舞台は整っている。
「もしかしたら今日あたり」そう思うとなかなか眠れなくなった。

最初に秋葉原の電気街に飛び込んだ。ダミーの防犯カメラを買うためだった。
数千円のものを3台買ってポストからよく見える位置に取り付けたのだが、不
安は消えなかった。賊は騙せても自分は騙せない。それから数ヵ月後、やむな
く警備保障会社と契約することになり、実に我が家には5台のカメラが賊と対
峙している。ダミーのカメラを取り外すとキズ跡が残るからそのままにしてい
るのだが、最近ではどれが本物か自分でも分からなくなってきた。


(つづく)

 
 
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