給排水、衛生(1) - 設備の大切さ - SE構法、重量木骨、注文住宅なら一級建築士事務所 QUEST クウェスト

建築家の自邸、満足と反省の物語

給排水、衛生(1)

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  メールマガジン 「建築家の自邸、満足と反省の物語 NO.55」

  2005/2/15(不定期発行)

  第8章 設備の大切さ

   2.給排水、衛生(1)

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□ ご購読感謝

みなさま、こんにちは。
ご購読いただきまして誠にありがとうございます。

このメールマガジンは、これから家を建てる方のために、建築家の私が自邸を
建てたときのエピソードを物語風にアレンジしたものです。
少しでもみなさまの参考になれば幸いです。



■ 2.給排水、衛生(1)


 電気設備を人間の身体にたとえ、神経組織と考えるならば、さしずめ給排水
設備は、食道や腸などの消化器系とみなすことができようか。人間でも、この
経路で癌とかが発生しようものなら、「一巻の終わり」となる危険があるのだ
から、この設備工事も住宅工事にとっては最重要ポイントのひとつと言っても
よいはず。たしかにどちらも、毎日酷使される「動き」のある場所ゆえに、故
障が発生する率が高いのもうなずける。

 今回の自邸では、この給排水設備が必要な場所、つまりキッチンや洗面室、
浴室、それにトイレは、間取り的にほぼ一箇所にまとめて配置した。これはプ
ロを自称する設計士とすれば常識の中の常識。配管距離が少なければ、施工時
のコストが下がることは勿論、将来のトラブルも少なく、故障箇所の推定も容
易になるからだ。

給排水設備で、完成後よく問題となるのが排水音。ゴボゴボというトイレの流
れる音が聞こえるようでは不愉快だ。シャビシャビという雑排水の流れる音さ
えも気になりだしたら最後、神経に障ることこのうえない。私は長くホテルの
設計に携わってきたので、この排水音にはほとほと悩まされたひとり。ホテル
の場合、後で「どうにかしてください。」と懇願されても配管スペースが狭く、
なかなか改善が難しいことが多く泣かされてきた。

 私の自邸では水廻りのエリアが集まった場所の直下が、賃貸用のアパートと
なっているため、特にこの排水音には気をつかった。勿論、配管は3階の床の
上に転がして、出来るだけ早く外壁から外に突き出すことにした。このように、
一度床を作って配管をした上に、もう一度浮かせて床を作っておけば、階下に
音が伝わりにくいし、万一漏れても、床を剥いで自分のエリア内で補修が可能
だ。この方法を二重床あるいは浮き床と言い、最近の分譲マンションでは常識
的な施工方法となっている。

さらに、トイレの配水管には、外壁に使用して余っていたグラスウールの断熱
材を自分でかまわず巻きつけてみた。断熱というより吸音材として多少の遮音
効果が期待できるだろう。それでも木造の宿命として、一般的に壁や床の遮音
効果が低く、深夜の排水音が完全に遮断できるかどうか心配が残った。完成後、
階下の入居者から排水音のクレームが届いたことは今のところはないので、
遠慮はあるだろうが、とりあえずホッとしている。

 ところでここ最近、トイレの便器のテレビコマーシャルを見かけることがあ
る。遂に便器もここまで来たかと感慨深く拝見しているのだか、ついその昔、
ホテルの設計を担当していると国産の便器のデザインのなんとダサイこと。不
満を抱えながら、少なくともデラックスルームやパブリックトイレなどには、
決まって輸入製品を採用してきたものだ。

それが、洗浄便座が普及し始めた頃から少し事情が変わってきた。ホテルでも
この洗浄便座付きの国産の便器が採用され始めたからだ。ホテルで採用する以
上、多少なりとも洗練された形が求められる。メーカー側でもその必要性を感
じたのだろうか。ここ数年でデザインの開発が進み、背中のタンクが目立たな
くなってきたことで、ずいぶん美しくなったと思う。

そして、この傾向は数年前から家庭用の便器にも波及し、私の自邸が建設され
る頃には、タンクの目立たない普及品がカタログに載り始めていた。値段はま
だ高めだったが、将来自邸をショールームにして、住宅の設計業務を受注しよ
うという目論見も芽生えていたのでここはひとつ奮発することにした。「ホテ
ルのような住まい」を目指しているのに、従来からのタンクを背負ったもので
は許されない。

それがつい最近では更に進化して、遂にテレビに登場である。普及品として大
量生産にまでは至っていないことから、流通コストの削減が出来ないので、ま
だまだ聞いて驚く価格なのが残念だが、毎日お世話になる頻度は高いので、長
い目で見て、私同様、奮発してみるのも有りかと思われる。「高性能で美しい」
こうした衛生機器が広く日常の中に採用される環境が整ってくることを願うば
かりだ。

さて、奮発したお陰で、我が家を訪れたお客様には「どうぞ、どうぞ」と、ト
イレに案内したくなるのだが、世の中すべて良いというものはありえないのか
もしれない。ある時、妻がホームセンターで水に溶かす芳香剤を買ってきた。
流す水がブルーになるヤツだ。本日の特別奉仕品とかで、かなり安かったらし
い。その数1ダースはあろうか。「後はよろしくね」とは言われたものの、さ
て困った。理由はタンクの蓋が見当たらないのだ。以前は、そのみっともよく
ないタンクの蓋をちょいと持ち上げてドボンで済んだのに。

「そんな馬鹿な、どこかにタンクは在るはずだ。」トイレの床に這いつくばっ
た姿勢でやっと見つけたタンクの蓋は、なんとタンク全体を被っていた。脇腹
のビスをはずして、実際持ち上げてみるとずっしり重い。きっと試行錯誤の結
果、美しく見せるためにはこの方法しかなかったのだろう。「衛生器具メーカ
ーの技術屋さん、ご苦労様。」と思わず頭を下げたくなったが、芳香剤のため
に、これから何度となくこの蓋を取り外すのかと考えたら、すぐには立ち上が
れなかった。


(つづく)

 
 
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