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メールマガジン 「建築家の自邸、満足と反省の物語 NO.56」
2005/3/9(不定期発行)
第8章 設備の大切さ
2.給排水、衛生(2)
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□ ご購読感謝
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みなさま、こんにちは。
ご購読いただきまして誠にありがとうございます。
このメールマガジンは、これから家を建てる方のために、建築家の私が自邸を
建てたときのエピソードを物語風にアレンジしたものです。
少しでもみなさまの参考になれば幸いです。
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■ 2.給排水、衛生(2)
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洗面室は、ホテルらしく大理石のカウンターにすることに最初から決めてい
た。ホテルの仕事で面識のある岐阜県関ヶ原市の石屋さんで、安く加工しても
らう約束が出来ていたからだ。石種は高級感のある黒御影石に決めた。これに
真っ白な洗面器を組み合わせれば、都市型ホテルのひとつの定番だ。この場合
の洗面器は、カウンターに開けた大きな穴の下にあてがう形式のアンダーシン
クと呼ばれるものを使用することになる。
広さにやや余裕があったので、洗面器はふたつ同じ物を並べることにした。
実際のところ、家族6人に洗面器ひとつでは、使用時間が重なって困ることが
目に見えていた。それに、以前からホテルのスウィートルームや高級なリゾー
トでは、ふたつの洗面シンクは常識なので、「いつかきっと我が家でも」と憧
れもあった。ここで、その夢が叶うことになる。
ふたつの洗面器は同じ物を使用したが、水栓も同じでは遊び心に欠けるので
、変えることにした。ひとつは、お湯と水が別々な握り玉となっている混合水
栓。もう一方は、レバーハンドル状の物を採用した。実はこれ、以前に新しく
ホテルを建設する際、モデルルームで試験的に取り付けてみたものだ。デザイ
ンの検討用で、実際に水を出したものではないので新品同様だった。
いつもは、この時点で産業廃棄物として捨てられてしまう運命にあるのだが
、自邸の着工も迫っていたので、そっと保管しておいた。これらは何れもドイ
ツ製の立派なもの。この程度の役得でもなければ設計業務は辛すぎる。
さて、この洗面室、引っ越してから「チョット変じゃない?」家族の皆が首
をかしげた。実際のところ、違った形の水栓が並んでいて、自分でも違和感を
感じたが後の祭り。「どちらが使いやすいかの実験のため」と家族には力説し
て廻ったのだが、タダで入手できたのだから文句は言えない。
ところで結果としてどちらが使用勝手が良かったか。実は今でも結論が出てい
ない。握り玉が分かれているタイプでは、お湯か水か、出てくるものがはっき
りしているので分かりやすい。真夏に冷たい水で顔を洗いたい時などは、迷わ
ずこちらの水栓に手が伸びる。冬もまた同じ。給湯器自体でお湯の温度は制御
されているので、お湯の握り玉を廻しても、いきなり熱湯が出ることもない。
一方、レバーハンドルのものは、外国製ということもあって、水の勢いが半端
でなく、いつもこの爽快感がたまらない。勿論、レバーを上げ下げするだけな
ので、石鹸を使いたい時も便利だ。結局のところ両者引き分けか。それでも強
いて優劣をつけるとデザインで凝れば握り玉スタイル、使用勝手で選べばレバ
ーハンドルとなろう。
給湯について一言。洗面室や浴室、それにキッチン。これらに給湯する場合、
どこに給湯器を設置したらよいか。私は設計時に、このことを真剣に検討をし
なかったが、これがいけなかった。言い訳めいているが、何しろ、それまで住
んでいた古家では、水廻りのスペースは極端に狭く、それぞれの場所がくっつ
いていたので、お湯はどの水栓からも直ぐに出てきた。
しかし、新居では様子がやや違った。一番頻繁に使用するキッチンを優先した
ので、結果として給湯器から洗面室が最も遠くなってしまったからだ。キッチ
ンでは、お湯を大量に使用するがそれほど急を要しない。しかし、冬場の洗面
室ではなかなかお湯が出てこなくてイライラすることが多い。教訓だ。今後の
設計では、給湯器を洗面室に一番近い所に置くことにしよう。こうすれば、私
以外の施主はあのイライラから開放されるに違いない。
ところで、住み始めてからこの洗面所でもうひとつ問題が発生した。排水が
スッと流れないのだ。一般的に洗面器には、お湯や水を溜められるようにポッ
プアップというツマミが付いている。シンク一杯に水を溜めておいて一気に排
水しながら、これを上げ下げしても排水の勢いはそれほど変わない。通常、衛
生器具と呼ばれる流しや洗面器には、下水管や排水桝から臭気が逆流しないた
めに、器具のすぐ下にトラップと呼ばれる水溜りができるための装置が取り付
けられている。簡単なものでは、配水管が一回グニュッと回転しただけのもの
もある。
配水管が詰まるとすれば、最初にここを疑うのがよい。とは誰かに聞いていた
が、果たしてどうしたら直るものなのか。自分の専門分野に近いことから、何
とかしようとあれこれ試みるものの、そのトラップを外すには専用の工具が要
る。長時間仰向けになっている私に「あなた大丈夫なの?。」との声が聞こえ
た。いたわりの言葉と分かっていても、私達夫婦の場合には時々妙な意地が発
生して、「何とかしてやるぞ。」と余計な力が入ってしまう。さらに仰向けの
姿勢で配水管との格闘がしばらく続いた。
と、その時婆ちゃんの脚が見えた。「なんやぁ、排水が詰まったか?ゲボゲボ
買ってきたらどうやね、百円ショップに売っとるで。」これすべて岐阜弁。ゲ
ボゲボとは棒の先にゴム製のお椀が付いた特殊な用具で、正式な呼び名は分か
らないが、たしかに昔に見たことがある。近所の金物屋で「ゲボゲボ下さい。」
と言った時は顔に血がのぼったが、持ち帰ってから、少し水を溜めておいて、
力づくでお椀を潰したり戻したりするうちに、黒く細かいゴミや髪の毛が浮い
てきた。
確かにゴミが詰まっているんだ、と判明した瞬間、どちらの洗面器からも溜ま
っていた水が勢い良く排水されていく。器具が正常に働くことがこんなに気持
ちのよいものかと再認識した一日だった。。それからというもの、このゲボゲ
ボは我が家の常備品としての地位を獲得し、洗濯機の脇に鎮座することとなっ
た。次回からはこれを新築祝いの定番にしようかと思っている。
昨今、このような衛生機器は、確かにデザインがよくなってきて嬉しい限り
だ。しかしその反面、裏に隠れた配管部分や排水桝は依然として従来のままで
ある。臭いを遮断する為のトラップの形状や、流れが悪くなった際のメンテ方
法の追求など、改良の余地がまだまだ多くある。
、
(つづく)
