床暖房とトップライト(2) - 設備の大切さ - SE構法、重量木骨、注文住宅なら一級建築士事務所 QUEST クウェスト

建築家の自邸、満足と反省の物語

床暖房とトップライト(2)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  メールマガジン 「建築家の自邸、満足と反省の物語 NO.58」

  2005/3/27(不定期発行)

  第8章 設備の大切さ

   3.床暖房とトップライト(2)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


□ ご購読感謝

みなさま、こんにちは。
ご購読いただきまして誠にありがとうございます。

このメールマガジンは、これから家を建てる方のために、建築家の私が自邸を
建てたときのエピソードを物語風にアレンジしたものです。
少しでもみなさまの参考になれば幸いです。



■ 3.床暖房とトップライト(2)


床暖房の熱を発生する床バネルは通常12ミリの厚さで、これを床の仕上げ材
のすぐ下に敷き込むことになるので、床暖を施工する所とそうでない所との段
差を無くすためには、工事の早い時期に施工する範囲と床の材質を確定する必
要がある。床材の厚みが異なる場合や、床暖パネルが間に挟まれる場合、床を
支える根太や大引きといった構造材自体のレベルを予め加減しておかないと、
捨て張りという余計な材料と手間が必要になってしまうからだ。

床材はそれ自体が暖められるので、熱伝導率がまあまあ良くて、変形し難い物
を選定する必要がある。石やタイルなどは問題が少ないが、フローリングの場
合は、注意を要する。特に無垢のフローリングは、熱による反りやヒビ割れが
出たり、乾燥によって隙間が大きくなるなどの不具合も報告されている。床暖
用として売り出されているフローリングの大半が、合板の上に薄くスライスし
た無垢材の単板を貼ったものであるのは、こうしたクレームを避ける為なのだ。

 しかし、私の知人の中には、それを承知で無垢のフローリングを敢えて使用
している人もいて、その後「やり直した。」との噂も聞いていないので、その
真相の程は判らない。これこそ程度問題で、私はコルクタイルにしてしまった
からこの選択について悩むことはかったが、今になって考えれば、多少の不具
合は覚悟で、無垢のフローリングを採用してみても良かったかなとの思いが残
っている。

 自邸では、竣工が春先だったので、床暖房の運転を開始したのは半年ほど経
ってからだった。ガスによる床暖房では、熱源機が給湯機を兼ねる場合が多い
ようだが、私の場合、自宅の他に階下の事務所にも床暖房を導入していたので
容量的に無理があり、給湯機との兼用は出来なかった。試運転の後、半年間休
んでいた床暖用の熱源機は、秋口には特に支障もなく動き始めた。

設置場所は他に適当な場所が見当たらず、とりあえず婆ちゃん(私の実母)の
部屋に面するバルコニーになっていた。床暖房の設置エリアのほぼ中心で、一
番効率がよいとの判断なのだが、長年可愛がられて育った長男の私としては、
内心心配が一つだけあった。「給湯器の騒音と振動がうるさくないか。」とい
うことだった。年寄りは、小さな物音にも敏感で、一度目が覚めるとなかなか
寝付けないらしい。せっかく、南向きの一番いい部屋をプレゼントするのに、
騒音付では台無しだ。しかし結果は以外な程静かで、孝行息子の座は守られる
ことになった。

 勿論、床暖房の効果は言うに及ばない。我自邸の間取りは、今日では一般的
になっているLDKスタイルで、居間、食堂、キッチンが空間的に一つに繋が
っていて、まったく間仕切りがない。合計すると30帖近くなる広さだが、この
床暖房のお陰なのだろう、真冬でも場所によってヒヤリとする寒さを感じたこ
とがない。勿論真冬の暖房は、この床暖だけでは不十分で、ガスのファンヒー
ターが、家族の集まるダイニングテーブルと居間の間に一台置かれている。

しかし、この一台で十分なのだから、床暖の効果は絶大だ。「なぜかチョット
寒くない?」誰かが口にする時は、決まって床暖房のスイッチを忘れているか、
階段に続くこの広い空間への入り口のドアが開け放たれているかのどちらかで
ある。

 一戸建ての住宅の場合、これまで数十件の住宅を設計してきた経験から察す
るに、外断熱工法の有無に関わらず、マンションなどの共同住宅よりは、年間
を通して、はるかに寒暖の差が大きい。よく言えば、季節の変化を楽しめる訳
だが、真夏の暑さや真冬の寒さは、やはり厳しい。一度社宅やマンションに住
んで、一戸建てに移転した場合、引越し後に「先生、戸建てはやっぱり寒いで
すね。」との連絡が入る。決まって口調は、やや冷ややかだ。

特に、一階を居間や台所にしているお宅では、朝方、二階の寝室から階下に降
りる時にはゾクっとするらしい。この私も、三階で寝起きして、朝に「今日も
イイ天気だ」と張り切って出勤すると(たった十四段の階段を下るだけだが)
二階の事務所は別世界のごとく冷え冷えとしている。すかさず、ファンヒータ
ーと床暖のスイッチを入れるのだが、電話連絡が続く三十分間はブルブル震え
ている有様だ。反対に、真夏には階下の空間は暑さが和らぎ、凌ぎやすい場と
なるのだが。


追伸。このメルマガを読んで妻が言った。「いやだぁ、早く言えばいいのに。」
今日から床暖のタイマーがセットされることになった。明日からは、出勤の一
時間前に床暖のスイッチが自動で作動し、私の到着時刻には「ほんのり暖かい」
状態が保たれているらしい。この数年間の身震いは何だったのだろう。


(つづく)

 
 
SE構法、重量木骨、注文住宅なら一級建築士事務所 QUEST クウェスト 東京都渋谷区笹塚2-41-13