床暖房とトップライト(3) - 設備の大切さ - SE構法、重量木骨、注文住宅なら一級建築士事務所 QUEST クウェスト

建築家の自邸、満足と反省の物語

床暖房とトップライト(3)

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  メールマガジン 「建築家の自邸、満足と反省の物語 NO.59」

  2005/4/6(不定期発行)

  第8章 設備の大切さ

   3.床暖房とトップライト(3)

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□ ご購読感謝

みなさま、こんにちは。
ご購読いただきまして誠にありがとうございます。

このメールマガジンは、これから家を建てる方のために、建築家の私が自邸を
建てたときのエピソードを物語風にアレンジしたものです。
少しでもみなさまの参考になれば幸いです。



■ 3.床暖房とトップライト(3)


 これまで住んでいた古家には、まったく光が差さなかった。洗濯物も生渇き
で、洗ったばかりの下着が異様な臭いを発することも度々。その反動から、と
にかく明るい家にあこがれていた。「もっと光を」と直射日光にも飢えていた
わけだ。今回の自邸は三階建てで、その最上階が住居部分になると分かった時、
反射的に天窓を取り付けることに決めた。

 天窓の取り付けは、屋根工事の前となる。つまり上棟式の翌週には、現場に
品物が届いていなくてはならない。熟練した設計者による特注は別として、雨
漏れの危険が伴うことから、市販の既製品が無難と思われる。既製品でも屋根
の材料によって使用する水切り板の形状が違うので、相当前から製品を発注し
ておかないと、現場で急に設置を決めても間に合わない場合が多い。

 それでも「一生のことだから」とダダをこねた場合、工事は一時中断し、後
で追加変更料が請求されるのは必至だから要注意だ。私の場合は、設計段階か
ら決めていたので、工事は順調に進んだが、取り付け位置は現場で実際に空を
仰ぎ見て決めた。

 よく「トップライトは、北側の屋根につけるのが常識だ。」と書いてある。
「直射日光が入ると、暑くてしかたがないよ。」というわけだ。しかし、果た
してそうなのか。名建築ほど光の入れ方がうまい。反骨精神でもないのだが、
ちょっと冒険をしてみることにした。実際、直射日光が部屋を駆け回らないよ
うでは面白くないではないか。

 今回、天窓は南傾斜の屋根にふたつ、北側にふたつ、計4台奮発することに
した。奮発と書いた理由は、意外とコストが掛かったからだ。製品代の他に電
気工事が加算され、取り付費と屋根工事の手間も見込まなければならない。取
り付けた場所は、居間と食堂、それにキッチンと階段を上がりきった廊下であ
る。

 南傾斜の天窓からは、夏はもちろん、冬場でも室内に光の束が現れる。どう
かすると、床や壁にフリズムの虹模様が現れることがあり、娘の貴子がその都
度、階下の私の事務所まで大声で知らせに来る時は目尻が下がる。心配した夏
の暑さのことは、天井が高いことと、電動のブラインドをオプションとして取
り付けたことで、特に問題は発生していない。こうしてみると、専門家の意見
を鵜呑みにするのも時に損をすることがある。かく言うこの私のメルマガも、
かなり自分勝手な内容なので要注意かも。

 さて、考えてみれば、屋根に窓を付けるなんて無茶な話でもある。しかも電
動で開閉までするのだから驚きだ。一見無謀なこの試みを最初に挑戦した人は
エライと思う。日本でも、古い民家の小屋裏に一筋の光が差している写真をよ
く見かけるし、京の町家にも同様の光景を見つけることができるから、特定の
誰かの発明ということでもなさそうだが、既製品に限ればその実績と信頼性で
デンマーク生まれのベルックス社のそれが安心感を誘う。既製品として、この
会社が世界で最初かどうかは定かでないが、その普及度と品揃えを評価して、
4台ともこの会社のものにした。

 本体はほぼ完成品になっていて、外側はアルミ製、内部は松のムク材になっ
ていた。しかし、ここ数年で日本の風土に合わせてずいぶん改良され、内部は
樹脂製、網戸も標準装備されているらしい。ガラスは数種類の中から選べるの
で、どうせなら室内から雲の動きや星空が見える方が面白いと思い、網入りの
透明ガラスを選択した。

 ブラインドを取り付けた南側の天窓から空をゆっくり眺めることはないが、
そのブラインドの隙間から満月が真上に大きく見えて、家族中で「おおっ」と
歓声を上げることもしばしば。また、ブラインドの無い北側の天窓からは、時
々雲の動きに見入ることがあるし、東京の空のハンデはあるが、はっきりと数
個の星を発見できたりする楽しさが味わえる。

 この天窓のおかげで、とにかく我が家は一日中異様に明るい。朝起きて寝室
を出た瞬間、今日の天気が手に取るように判るのがうれしい。自然と共に生き
ている実感がある。以前の古家とは月とスッポンの違いだ。こんな世界が、こ
んな暮らしがあったのだ。求めよ、さらば与えられん。

 天窓を採用した理由は、窓からだけでは満足できないで、欲張った末、窓か
ら入る光の3倍に匹敵すると言われる天井からの光の確保だった。ところが、
実際に生活をしてみて気づいたことは、明るさもさることながら、室内の風通
しの良さだ。これが思わぬ収穫だった。この天窓をほんの少し開放するだけで、
部屋のよどんだ空気が一気に上昇していくのが分かる。

 日曜の昼下り、この空気の流れを肌で感じると加山雄三ではないが「ぼくぁ、
しあわせだなぁ。」と、妙にリゾート気分に浸ってしまうのである。しかし、
この感覚はどうやら私だけでもないらしい。日頃から、長男のケイスケの怠慢
な素行に怒り心頭の妻のケイコさんも、「ああイライラする。ちょっと、天窓
あけてくれない。」とおっしゃることが時々ある。よどんだ空気と言うより、
よどんだ自分の気持ちを、風が空に開放してくれるらしい。


(つづく)

 
 
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