アルミサッシの実情 - 建具とサッシ - SE工法、重量木骨、注文住宅なら一級建築士事務所 QUEST クウェスト

建築家の自邸、満足と反省の物語

アルミサッシの実情

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  メールマガジン 「建築家の自邸、満足と反省の物語 NO.65」

  2005/9/8(不定期発行)

  第9章 建具とサッシ

   1.アルミサッシの実情

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□ ご購読感謝

みなさま、こんにちは。
ご購読いただきまして誠にありがとうございます。

このメールマガジンは、これから家を建てる方のために、建築家の私が自邸を
建てたときのエピソードを物語風にアレンジしたものです。
少しでもみなさまの参考になれば幸いです。



■ 1.アルミサッシの実情


 SE工法の場合は、一般的な在来工法の木造住宅に必要なつっかい棒、つまり
筋違い(スジカイ)は要らない。その代わり、壁になる部分に構造用のベニヤ
合板を張り付ける場所が数箇所必要となる。耐力壁と呼ばれる部分で、これが
地震時の横揺れに対抗するわけだから重要極まりない。役所の中間検査では、
担当者もこの部分は見逃さないで、大工が施工を忘れていようものなら、勝ち
誇ったように「施工後に写真を提出するように」と強く念を押して帰って行く。

 さて、この段階が終わると、大工はとにかく外壁を一刻も早く作りたがる。
屋根工事は既に完了しているわけだから、外壁ができれば風雨の心配が無くな
るからだ。私の自邸の場合は、ちょうどこの時期が真冬に重なっていたから、
北風小僧を追いやるためにもこの工事を急がねばならなかった。数日後、大工
四人で耐力壁を含めた外壁下地の施工が終わると、次はアルミサッシを取り付
けていく。

この工程に合わせて、まずサッシの色決めに悩むことになった。建築雑誌を見
れば、概ね建築家が関与している住宅では、サッシの色はシルバー色と相場が
決まっている。私も「やっぱり、クセの無いシルバーだよねぇ。」という訳で、
勇んで発注したのだったが、サッシ屋からその日のうちに返事がきた。「先生、
規製品の場合、シルバー色はどのメーカーにもありません。」血相を変えて私
は「雑誌を見てよ。ちゃんとあるじゃないの。」と反論したが、「じゃあ特注
にしますか。高いですよ。」と脅され、次の言葉を失った。「ハハンなるほど、
建築家の先生方は、このあたりに余分なコストを費やしているのか。」

具体的なサッシメーカーは、アルミの部材の肉厚が他社より厚いと誰からか聞
いて、YKKを指定していた。その真相は不明だが、他社より多少センスも良
さそうに見えた。しかし、シルバー色が無いのなら背に腹は代えられない。他
のメーカーも調べてもらったが、やはりどのメーカーにもシルバーは無かった。
ただし、この原稿を書いている昨今では、こうした切なる設計士の声に答えて、
各メーカーがこぞってシルバー色(ステンカラー)を登場させているようだ。
ところが当時はどこも特注扱いで、とても予算内に落ち着きそうになかったの
で、とにかくこの時点では、白、黒、茶から選択するしかなかった。

「どうせどの色も建売りっぽくて大差ないや。」と半ばヤケになっていたが、
ふとニューヨーク五番街のオフィスや店舗などで白いサッシが多用されていた
ことを思い起こして、衝動的にホワイトに決めた。思えば自分でも呆れるほど
イイ加減な理由だった。ただ、建築家の端くれとしてのプライドも多少あって、
ガラスを抑えるコーナービートと呼ばれるゴムを、あえてブラックに特注する
ことにした。白いサッシにメリハリが効いて、美しいと思ったからだ。がしか
し、その目論見は見事にはずれることとなった。ご存知のように、私の自邸は
周囲を建物に囲まれていて、近くでサッシを見ることはまったくできない。勿
論、内部からも、網戸の枠で隠れたりしてコーナービートは見えてこないのだ
った。

 サッシの色を決めると、次には型式つまり引き違いとか、ハメ殺しとかの形
状を指定しなければならない。日本の風土を考えれば、やはり大きな開口部は
引き違いが最適であろうと思われた。建築家の設計ではよくハメ殺しの開閉し
ない窓が多用されているが、デザイン的には優れているものの、ガラス拭きの
問題や風通しの悪さを考えると躊躇してしまった。結果的には、防犯を意識し
て1階の玄関部分にある大きな窓と、階段を上がりきった三階のホールの窓だ
けを透明ガラスのハメ殺し窓とした。

一階では、賊が侵入しようとした場合、ハメ殺しだと自分の体全体が通過でき
るほどの穴を開ける必要があり、相当の衝撃を加えなければならないだろうと
読んだため。三階は外側にバルコニーを設置したので掃除が楽だからだ。どち
らも外の景色を取り込むことが目的で、引き違いでは絵にならなかった。どち
らも畳二枚ほどの大きな窓だったが、住み始めてから修正を加えることとなっ
た。

まず、1階のハメ殺し窓には、さらに内側に防犯ガラスを取り付けて、二重ガ
ラスの万全策を取ることになった。後日仕事で警察官の家を設計した際、「そ
こまでするの。」と呆れるほどの防犯対策を要望され、我々一般市民が知らさ
れていない犯罪の多発さを実感したためだってた。「おー、怖。」

三階のそれは、気張って大きな開口の窓としたため、相当離れたマンションの
窓から丸見えの状態となってしまい、慌ててヨシズを買いに走り、前面をこれ
で覆うことになってしまった。住宅の場合は、こうした設計段階では予期しな
い様々な事象が現れ、大いに勉強になる。その意味でも、実際に自分の家を建
ててみることは意義深いと実感した。

 さて、最近の住宅建築の雑誌では、自然回帰の傾向も手伝って、木製サッシ
が使用されている作品が多くなってきた。当然のこと、私もほとんどの木製サ
ッシメーカーからカタログと価格表を取り寄せて検討することにしたが、どれ
も思ったより高価だった。とても全箇所に採用する予算は無いのだから、一点
豪華主義として、どこか一箇所に採用してみようかとウジウジ思案しているう
ちに、時間が経って行った。

その昔、岐阜の実家では、建設当初からアルミサッシは存在せず、全て木製の
製作ものだった。40年前の当時としてはサッシと呼ぶより木製建具と言ったほ
うが正しいかもしれない。今日、帰省の際に改めて眺めても、それはそれはよ
く加工され、職人の技量が偲ばれるような立派な姿をした建具ばかりだ。しか
し、如何せん時間の経過と共に隙間風が防げなくなり、息子二人を東京の大学
に出してしまい二人残った両親は、大枚をはたいてリフォームした経緯がある。
 
 岐阜県可児市あたりは冬場、東京より4~5度は低い。今では掃き出し窓は全
てアルミ製のサッシに取り替えられ、残った木の窓はガムテープで四方メ貼り
されている。この事実も手伝って、「ここは一発,奮発して木製サッシを」と
の意気込みにブレーキがかかった。しかし、最近の木製サッシは改良がされて
いるらしい。今、改めて思うと、どこか一箇所くらい性能の比較の為に木製サ
ッシを採用すべきだったと悔やまれるのだが。


(つづく)

 
 
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