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建築家の自邸、満足と反省の物語

ゴミ処理とサービスヤード

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  メールマガジン 「建築家の自邸、満足と反省の物語 NO.74」

  2007/1/3(不定期発行)

  第10章 キッチンスペース

   4.ゴミ処理とサービスヤード

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□ ご購読感謝

 ご購読いただきまして誠にありがとうございます。

 そして、謹んで新年のお喜びを申し上げます。
サボリにサボッた小生のメルマガ、遂に読者が千名を割ってしまいました。
発行当初は、断りきれない程の出版社から発刊の予約が舞いこんでいたのに、
今ではどこも音信不通。これではもう自費出版の道しかありません。トホホ。
それでも時々いただく励ましのお言葉を支えに、今年こそ完遂できるよう頑張
りますのでよろしく。

このメールマガジンは、これから家を建てる方のために、建築家の私が自邸を
建てたときのエピソードを物語風にアレンジしたものです。
少しでもみなさまの参考になれば幸いです。



■ 4.ゴミ処理とサービスヤード


 3階の明るいキッチンが全て良かったかと言えば、そうでもなかった。何に
でも一長一短はあるものだが、一番頭を悩ませたのはゴミ捨ての問題である。
そもそもゴミのストック場所は比較的涼しい1階の日陰に超したことはない。
かと言って、3階からいちいち下まで持っていくのも大変なことだ。ビニール
袋の底から臭い汁がポタポタ落ちるなんて、もう想像しただけでも、胃のあた
りからこみ上げてくるものがある。

以前の古家での間借りのような生活では、貯まった不燃物は軒先に、生ゴミは
勝手口の土間に、いずれも大きなビニール袋に入れられ収集日まで放置されて
いた。妻も私も「どうせ誰も来ないし」が合言葉だった。が、これからはそう
もいかない。昔から「身に着けるもので人の意識も変わる。」とよく言われる
が、住環境の善し悪しでも人の行儀作法も変わっていくようだ。

 ところで、最近の新築マンションの新聞折り込み広告は、実に立派で驚くこ
とがある。販売価格としては、世に出回る商品の最高峰だから、スーパーの特
売品を並べたチラシとは大きさも紙厚も違って当然というべきか。日曜日の遅
い朝に、その間取り図を勉強を兼ねてじっくり眺めて見ることがあるが、想像
力が描きたてられる魅力的なキッチンスペースは意外に少ないように思う。ま
してや、ゴミ箱のスペースなんてどこにも設計されていない。ゴミの分別収集
の徹底が叫ばれている今日では、必要不可欠なスペースなのだが、きっとまだ
独身で生活感の無い若い設計者の案がそのまま採用されているのだろう。

 しかし、悲しいかなこうしたマンションもやがて売れていく。実際の購入者
も初めての体験だから「こんなものかな。」と諦めて、それぞれ工夫しながら
生活しているに違いない。きっとその内キッチンのゴミの置き場に困って、頻
繁に集合のゴミ置き場まで通っているはずだ。「あっしには関わりのネェこと
でござんす。」と爪楊枝を咥えながらニヤリと笑って見過ごすしかないが、同
業者としては世間に対して多少罪悪感が残ってしまう。

実際のところ、マンションに限らず一軒の家庭では、可燃ゴミに不燃ゴミ、そ
して空き缶、ビン用と最低3~4つのポリ容器が必用になることは経験的に分
かる。これらの容器は当然床に並べて置くわけだから、相当のスペースが要る
はずだ。位置としては、やはり家族の皆から目に付き難い場所が良いに決まっ
ている。自邸では、給湯ポットやトースターを置く予定のカウンターがダイニ
ングからは見えづらい位置にあったため、その下を空けて、ポリ容器置き場と
した。仮に、キッチンを陽と陰と分類すれば、陰の場所となるが、これがある
お陰で美しいキッチンスペースが保たれることになった。

 ところで、3階にはキッチンの他に洗濯機置き場があることから、当然洗濯
物干場も必要になってくる。南側にバルコニーを全面的に取りつける設計とし
ていたが、建ペイ率に余裕がないので、法的に1メートル以上飛び出すことが
出来ない。よって、実際に使用できる奥行は有効で80センチくらいしかない。
「ちょっと狭くて問題ありかな。」
このあたりの問題点は、設計段階で手を動かしているうちに気づいていた。
ふと、下階のアパートの階段室の屋上がキッチンの窓下につながっていること
に気がついた。東側で朝日が燦燦とふりそそぐ3畳ほどの広さ。

「うまい!」無意識のうちにキッチンからこの階段室の屋上が利用できるよう
勝手口用のドアを書き込んでいた。設計の途中で、このように偶然救われるこ
とがよくあるが、ちょうどパズルを解くように、あれもダメかこれもダメかと、
思いつくままに書きながら悩むうちに、ふと辿り着く快感を伴った晴れた境地。
ちょうど将棋の棋士の頭の中がこんな風にいつも回転しているのではないだろ
うかと思われる。

また、ここにはプロ用語でSKと呼ばれる掃除用のシンクを取りつけておいた。
雑巾や靴などを洗う目的なのだが、とにかく多目的に利用できるので、妻や婆
ちゃんの喜ぶ姿が想像できる。さらに、急な雨対策用に屋根もつけてやろうじゃ
あないか。ちょうど玄関側の西道路からは全く見えない位置にあるから、いつ
ものようにデザインと機能性と価格の狭間で悩まなくてもよい。

洗濯物が乾くように影にならない屋根材、その昔は決まって塩ビの波板だった
が、数年でヒビ割れてダメになる代物だ。見えないとはいえ、これはさすがに
ためらわれた。そこで波板の改良品でポリカーボネイトという薄くて丈夫な優
れ物を採用することにした。

「先生、ポリカの厚みはどのくらいにしますか。1ミリくらいから5ミリまで
ありますが。」施工途中に建材店から問い合わせがあった。
「そりゃあ5ミリでしょう。」と即答したまではよかったが後日唖然とした。
予想の5倍ほどの請求書が届いたからだった。よくよく調べてみると、厚さと
しては1ミリで十分だった。

「先生」と呼ばれる度に、ついつい知ったかぶりして指示を出してしまう悲し
い癖は、これまでどれほど高い授業料を支払ってきたことだろうか。
「こんなんつけときました、低予算で」と胸を張っていうつもりが、張りが5
分の1に縮まったことはいうまでもない。


(つづく)

 
 
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