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メールマガジン 「建築家の自邸、満足と反省の物語 NO.77」
2007/7/4(不定期発行)
第11章 各エリアの考察
1.倉庫・押し入れ・物入れ
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□ ご購読感謝
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ご購読いただきまして誠にありがとうございます。
またまた2ヶ月ぶりのメルマガです。このペースで行きますと、最後の「住
み心地」の文章を発行するのは2年後になってしまいます。未だ懲りずに目を
通していただいている読者の皆様には本当に申し訳ない気持ちです。
こうなったら8月のお盆の頃にひなびた温泉にでも籠って、まとめて執筆をす
るしかないと、あちこち温泉宿を探してみるものの、どこも既に満員で予約が
取れません。いつの間にか世の中には、豊かな人たちが増えているのですね。
ご存知かもしれませんが、この6月に新しく設計業務についての法律改正が
あり、善良な設計士には過酷な作業が増えました。「たった一粒の悪玉菌を退
治するのに、ここまで善玉菌をいじめるのか。」と思える今回の改正。
「馬鹿馬鹿しくて、もう設計士なんか止めてしまいたい。」
そんなボヤキが仲間の中に聞かれます。
職人の平均年齢はどんどん上昇し、資材もじわじわ値上がりしています。
ゼネコンや工務店の建築費は今後高くなるのは必至。ここに来て、設計士にま
で負担がかかるとなると、住宅建設も逆風の感があります。
このメールマガジンは、これから家を建てる方のために、建築家の私が自邸を
建てたときのエピソードを物語風にアレンジしたものです。
少しでもみなさまの参考になれば幸いです。
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■ 1.倉庫・押し入れ・物入れ
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岐阜の実家が藁葺き屋根だった頃、蚊帳の中で蛍を見つめながら眠った記憶
がある。燻製のような独特の匂いの蚊帳の中は、不思議な安心感があって、セ
ピア色の記憶の中に今でも留まっている。この頃はもちろん畳の上に布団が敷
かれていた。では自分がベッドで寝るようになったのは、いつごろのことなの
か。記憶を辿ってみると、実家が瓦屋根に新築されて間もなくのことだった。
弟と二人で寝ていた部屋に突然鉄パイプで出来た二段ベッドが運び込まれたの
だった。確か中身が藁のマットレスで、寝返るたびにジャリジャリと音がして
いた。
いよいよ私が中学生になって、勉強に身を入れなければならないとの父親の方
針で、ベッドは上下に分割されて弟と私はそれぞれ別の部屋に移ることになっ
た。以来いくつかの変遷はあったものの、ベッドの上に寝る習慣が続いている。
ベッドであれば、毎日押し入れに布団を収納する動作がいらないし、奥の深い
押入れも不要となる。
今回の新築では、子供達も爺婆も皆ベッドで寝ると決めていたので、毎日の
布団の上げ下げは無いのだが、それでも夏用と冬用の掛け布団の収納程度は必
要だし、誰も泊りになんか来ないと分かっていても、新築症候群にかかった人
が概ねそう思うように、我々も客用の布団一組くらいは必要と考え、その収納
場所を図面上で探ってみた。
最初の設計では、出し入れの作業が楽なように、廊下に面して一間間口の押し
入れを作っていた。しかし、なぜか押入れの建具は襖が似合う。そして、「い
ざ」という時、全ての建具をいとも簡単に取り外しできる優れものだ。木と紙
で出来ているので女性でも簡単に取り外しができる。住まいに関して、日本が
最も文化レベルが高かった頃の産物だが、「ホテルのような」と振りかぶった
我が自邸の廊下に突然襖が2枚ではデザイン的に不似合いではないかと迷い出
してから、決断が鈍ってきた。
そうかと言って、寝具を収納する押入れはどこかに必要だった。そこで最終的
には四枚の畳を敷いた予備室を作って、そこに一間の間口の押入れと、同じ間
口の箪笥置き場を並べる事で落着いた。勿論建具は襖としたが、定番の黒漆の
框に襖紙ではなく、白木の框に布のクロスを貼ってみた。和風の感覚は残るも
のの、モダンな印象に仕上がっている。
主に布団を収納するのだから、中段や底板をスノコにする方法もある。風通
しをよくするための知恵のようだ。比較的湿気の多い一階の押入れには是非施
工しておきたいが、今回は三階なので、さほど重要性を感じなかった。最近主
婦に大人気の通販(さだ まさしが「♪テレフォンショッピング、買い物くら
い体動かせ♪」と食っちゃ寝の妻に対する男の本音を歌っているが)にも既製
品があるので、後日たやすく購入できるからと、単に板張りの板敷きで済ませ、
今でもそのままとなってしまっている。人間、思いついた「その時」に対処す
るのが好ましい。
「新居に移ったら『いいものを少なく』の生活をしようね。」妻との約束で、
納戸と呼ばれる物置部屋は作るのを止めた。その代わり、季節ごとに入れ替え
る家電用品などの収納場所は多めに確保する必要があった。妻の格言によれば、
「収納場所があるからこそ、余分なものが散乱しない美しい生活の場が保てる
。」のだそうだ。
物入れスペースとしては、階段の下が真っ先にターゲットとなった。アパー
トの階段下も含めて、合計3ヶ所の空間がある。奥に長く、途中で頭が当たる
など、とにかく使い難いのだが、階段幅を一メートル以上確保していたので、
蟹歩きで何とか体が奥まで入っていく。暖房機器や季節の飾り物などをしまっ
ておく場所として重宝されることとなった。誰にも見られることは無いので、
内装は石膏ボードにビニールクロス張りだが、奥の方に給気口を付けておいた
ので、多少は空気が循環しているはずだ。しかし、一階のそこは、扉を開ける
たびに、ほんの少し空気が重い気がする。自然の摂理で、きっと湿気が多いの
だろう。通販でスノコ板を3枚ほど購入しなければ。
(つづく)
