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メールマガジン 「建築家の自邸、満足と反省の物語 NO.78」
2007/9/2(不定期発行)
第11章 各エリアの考察
2.ウォークインクローゼット
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□ ご購読感謝
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ご購読いただきまして誠にありがとうございます。
残暑見舞いのハガキが届くたびに、大好きな夏が去っていく物悲しさを味わ
っています。数少ない読者の皆様から激励をいただき、ラストスパートのメル
マガです。発行当時は珍しくもあり、各方面から注目を集めた「建築家の自邸
奮戦記」も最近いくつか目にするようになりました。自称「元祖」としては、
力尽きないうちにゴールに辿り着かねばなりません。
この夏、結婚15周年を記念して、挙式をした伊勢神宮に詣でる事になりまし
た。披露宴会場の志摩観光ホテルにも立ち寄ったのですが、当時の関係者は皆
さん退社され、時の流れを感じました。
二人の子供達は、木村拓也主演の「華麗なる一族」の舞台となったこのホテル
での食事に大満足。請求書を見て呆然の親を尻目に「また来ようね。」だって。
バブル景気にあやかって、勢いでやってしまった伊勢志摩での結婚式。華麗
なる一族ではない私達には、やはり不似合いな場所だったかも。それにしても
遠路はるばる駆けつけて司会をしてくれた故ポール牧さん、お礼と共に改めて
ご冥福をお祈りします。
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□ お知らせ
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現在発売中の雑誌「MeMO」(10月号)に「建築家がつくる建売住宅」
が特集され、冒頭に大きくクウェストの記事が載っています。昨年お引渡しし
た杉並区のI邸の取材記録です。お暇な時、書店で立ち読みしてみてください。
このメールマガジンは、これから家を建てる方のために、建築家の私が自邸を
建てたときのエピソードを物語風にアレンジしたものです。
少しでもみなさまの参考になれば幸いです。
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■ 2.ウォークインクローゼット
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ウォークインクローゼット、いつからこの言葉が使われだしたのだろう。要
は衣裳部屋の小規模なものと解釈しているのだが。ちょっと洒落た言葉の響き
からか、最近新築を考えている奥様方は必ず要望に入れてくる。衣裳部屋で思
い出すのは数年前、縁があって俳優の宇津井健さんのご自宅に伺った時のこと。
成城の一等地に立つ御殿で、その昔「葡萄屋」という名の洒落たレストランが
地下階にあり、一世を風靡した有名な場所だ。当時学生で長髪にベルボトム
(ジーンズの一種だが、差別化のために我々は敢えてこう呼んだ。)姿の私達
には禁断の聖地で、夜更けに忍んで見学に行ったことがあった。
数十年後、そのセレブご用達だった場所に立っていきなり驚かされた。何んと
玄関ホールが無いのである。外からドアを開けたらすぐ階段。そして階段を上
ったら直接広い居間と食堂。当時としては外観も未来的だったが、間取りも外
国映画そのものだった。その居間の延長に、とてつもなく広い衣裳部屋が続い
ている。整然と並んだ洋服類に加え、床にはエルメスの鞍なんかがいくつも並
んでいて、「カッチョヨサー」と妻は長崎弁で興奮気味にはしゃぐ始末。
部屋の片隅には使いこんだトレーニングマシンの数々。「可児さん、乗馬は楽
しいよ、一緒にやる?」ジーンズにTシャツ姿の健さん、胸は厚く白髪混じり
でもフサフサ(私の超憧れ)、勿論お腹は出ていない。テレビで見るよりずっ
と小顔の健さんが直接この私に語りかけてくる。まあ、ここまでくると男とし
て勝負になるはずも無く、額に汗して黙ってただ笑うしかなかった。
商売道具の建さん宅は例外として、通常畳2帖分ほどの小部屋にハンガーパイ
プを何本も吊りこんで帽子やバッグまで格納する方法は、雑多な衣類が外に出
ないという意味では優れた収納方法だと思う。勿論我が奥様も自邸の新築の際
はこの小部屋を外すはずがなかった。場所的には洗面脱衣室の近くか寝室の隣
接か迷う事になったが、脱いだものを取りあえずベットの上に放り投げられる
利点を優先して寝室の隣に設置することになった。
設計段階では「寝室と同じ位の広さにしよう。」お洒落な生活を夢見た私達
はそう話し合っていたものの、現実は厳しく、間取りのせめぎ合いの結果、二
人分合わせて合計6帖くらいの小部屋となってしまった。竣工間近になって、
ボードで囲まれたお互いの広さを目の前にした時、二人して冗談でなく南こう
せつの「神田川」を口ずさんでしまった。「3帖一間の小さな下宿は、やっぱ
り侘しいよね。」と妻がため息をついたのを見て決断したのだった。「仕切壁
を無くしてワンルームにしよう。」あくる日、大工の清水棟梁は30分で間仕切
りのボードを取り外してくれのだった。
最初から入口は別と決めていたので、出入りの為の引き戸は2箇所できてい
る。それはそのままとして、真ん中にポリスチレン製の収納ボックスを互い違
いに高く積み上げて、両側から使用できるようにしたらところ、なんとかお互
い我慢できる広さとなった。また、ここは裸足にくわえ出入りが頻繁の為、引
き戸の敷居の溝が不要な金具を使用した。ちょうど建具がモノレール状に吊ら
れている方式となる。ホテルなどでは常識なのだが、住宅の分野では未だ普及
が遅れているのではないだろうか。(住宅関係者の勉強不足を少しばかり指摘
しておく。)
内装については杉の無垢板を貼るアイディアが浮かんだ。間伐材で作る安価
な材料ではあるが、木の調湿作用を期待してこれに決めた。一見野暮に見える
が、誰に見せる場所でもないので許されよう。後日、帽子やベルト、それにバ
ック類を掛ける為に遠慮なく壁に釘を打てるのがうれしかった。勿論カビの気
配も皆無である。
だが、全てがうまくいくとは限らない。普通のクローゼットにない苦労も発
生するのだ。それは何か。広いウォークインを保有する誇りは、ホコリ(埃)
に悩まされる事になる。衣裳部屋と言うくらいに部屋なのだから、空気の量も
多い。換気扇で新鮮空気を取り入れると同時に、寝室に飛散する綿ぼこりまで
一緒に取り込んでしまう。結果、吊るしてある洋服は、一年後には白いホコリ
を身にまとうものと覚悟した方がよい。
狭い部屋にもかかわらず、最近体型の変化で着られなくなったと嘆く割には、
どの洋服も捨てられない妻。(彼女は「あなたこそ」と言っている。)
きっと我が家のウォークインクローゼットは数年後には衣類で埋まるはず。そ
の時の為に慌てて24時間連続で回る換気扇を取り付けることにした。最初は電
気代を気にしていたが、後に設備設計の達人に聞いたら、驚くほど安いとのこ
とで正直ホットした。今後の設計では、よそ様の家にも換気扇をバンバン取り
付けてやろおっと。
(つづく)
