廊下と階段(4) - 各エリアの考察 - SE構法、重量木骨、注文住宅なら一級建築士事務所 QUEST クウェスト

建築家の自邸、満足と反省の物語

廊下と階段(4)

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  メールマガジン 「建築家の自邸、満足と反省の物語 NO.82」

  2008/2/9(不定期発行)

  第11章 各エリアの考察

   3.廊下と階段(4)

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□ ご購読感謝

 ご購読いただきまして誠にありがとうございます。

 久々の大雪でした。と言ってもほんの数センチの積雪だったのですが、
このところの東京では、ひと冬に一度か二度の出来事だけに報道も過剰な
感があります。その積雪が残る中、杉並区の和田3丁目で着工したRC造の
分譲住宅の基礎工事に立ち会ってきました。最近の役所の検査は異常なものが
あるので、事前のチェックです。 私は防寒着ですが、職人はブクブクでは動
けません。白い息を吐きながらの数時間でしたが、帰り際にみんなで飲んだ
ビン入りの甘酒がおいしいのなんの。
 鉄筋の数量不足が取りざたされる昨今、偽装とは無縁の、ごく普通の設計士
と真面目な職人たちが寒風の中、真摯にもの作りに取り組んでいること、
そしてそんな人たちが大半であること、エアコン完備の室内にいる国交省の
役人たちには理解できないだろうなぁ。重箱の隅を探るような検査基準を
押し付けてくることを考えると。


■ 3.廊下と階段(4)

 カーペット敷きの階段を駆け上がると、三階のワンフロアーが私の自邸とな
る。階段を境に右半分が寝室や子供部屋の個室群、そして左半分が居間と食堂、
キッチンなどのパブリックエリアとなっている。そしてこれらの空間を長い廊
下でつなぐ構成は明快なのだが、一般的にこの廊下、意外に面積を必要とする。
実際、都会での狭小住宅の設計を請け負う場合、いかに廊下を無くすかが設計
のポイントとなる。つまり、移動のための空間を徹底的に省いて、必要な間取
りを確保する格闘技のような作業が続くのだ。

自邸でもこの長い廊下に個々の部屋が張り付く設計案を採用するかどうか相当
悩んだが、決め手は世界的建築家の安藤先生の言だった。氏が時々提唱する軸
線の手法、つまり人間の背骨のような役目を果たす一本の筋、建築の設計でも
最初にこの筋を通しておけば後の作業でそんなに間違うことがないという論理
を信じることにしたのである。結果、竣工後の日常の生活の中でも、常に自分
の位置が確認できるメリットが実感できて、動線計画としては成功だったかと
思う。「ある程度の無駄も必要」そう悟ったのだったが、これも広めの借地権
に出会った恩恵に他ならない。

 この長い廊下、ここも階段同様、木造のモジュールを壊してほんの少し広め
の幅としたのが大正解だった。機能面は勿論、住み始めてからも家そのものに
ゆとりを感じるからだ。さらに東西に長く延びた約13メートルの廊下のちょ
うど真ん中に、トップライトを設けた甲斐があって明るいのなんの。朝起きて
寝室からトイレに向かう間に確実に眼が覚める。ついでにその日の気象状況を
体で瞬時に理解できるのだからたまらない。天窓の効能が最上階に住むハンデ
を補っているのだった。

「ケイスケ、廊下を走るんじゃない。」これまた何回怒鳴ったことだろう。廊
下の西の端にある子供部屋から、キッチンの冷蔵庫めがけて一直線。真ん中の
天窓のあるあたりでトップスピードに乗り、ほんの数秒で彼は目的地に到達す
る。その度に、以外に振動に弱いSE工法のこの家は、震度2くらいの揺れ
(少し大袈裟か)を感じ、もちろん階下のアパートまで伝波する。ゼオンから
発売されている厚さ10ミリの制震ゴムを床の下地に敷き詰めるか否か、迷っ
た末にケチったことを後悔するも時すでに遅し。

 廊下は他の部屋との段差を消すため、統一してコルクタイルに決めた時、参
考にしたコルクタイルの見本帳には、優れた衝撃吸収力があるような表現が確
かあったような。しかし、原理原則に則って冷静に考えれば、たった5ミリ程
度のコルクタイルにそんな効果を期待する方がどだい無理な話。浅はかだった。

後悔しても始まらないので、竣工後に考えた対策は、階段と同じカーペットを
廊下に敷き込む方法だった。もうすでにコルクタイルで仕上がっているため、
両端はそのまま床材が見えるようにして、歩く部分のみカーペット敷きにする
置き敷き方式とした。幅80センチ、長さ12メートルもある繋ぎ目のないカーぺ
ットが運び込まれた時は圧巻だったが、敷き込んだ上を歩くと、いつの間にか
クネクネと曲がってしまった。「こりゃいかん」とズレ防止を兼ねて厚めのフ
ェルトを下敷きとしたところ、これが思いのほか振動を吸収してくれることに
なった。

振動は当初の半分くらいに抑えられ、「ケイスケ、走るな。」の罵声は家族の
誰からも聞かれなくなった。そして彼が思う存分ダッシュを繰り返す毎日が復
活したのだったが、その結果、数年後には渋谷区にある20校の小学校の中で、
なんと100メートル1位を獲得することになるのだから、世の中何が幸いする
かわからない。


(つづく)

 
 
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