玄関と庭(1) - 各エリアの考察 - SE工法、重量木骨、注文住宅なら一級建築士事務所 QUEST クウェスト

建築家の自邸、満足と反省の物語

玄関と庭(1)

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  メールマガジン 「建築家の自邸、満足と反省の物語 NO.83」

  2008/4/19(不定期発行)

  第11章 各エリアの考察

   4.玄関と庭

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□ ご購読感謝

 ご購読いただきまして誠にありがとうございます。

 昨年の暮れから、世田谷区に建設した分譲マンションの販売が始まり、
多忙の日々が続きました。(またまたメルマガが遅れた言い訳)
 このところ景気の減速でマンションの販売が停滞しているとの
新聞記事を見つけ、不安な毎日でしたが、おかげで残り1戸となりました。
やはり、「自分が住むとしたら」の視点を忘れず、
細部まで作り込む努力を怠らなければ必ず需要はあると確信できました。

 また、改正基準法のため長引いていた次のマンションプロジェクト
(杉並区松庵1丁目)の確認申請がやっと通過し、いよいよ工事開始。
土地を購入してから着工までほぼ一年。
「いい加減にしてよね、国交省。」と怒り心頭。

 このところマンションやビルの設計の仕事が多かったのですが、
最近また注文住宅の依頼が数件。
またまた楽しみ(ながらの仕事)が増えました。



■ 4.玄関と庭


敷地が少しばかり大きくても道路と接する部分が少ないと、車庫を道路に面
して作れないので、いったん敷地内に乗り入れてから回転できる場所が必要と
なる。そうでないと突っ込んだまではいいが出られない状況に陥る。こうして、
私の自邸は車の回転スペースが最優先される妙な設計となってしまった。

そもそもこの私が建築の世界に入るきっかけは、中学生の頃、フランク・ロイ
ド・ライトの設計となる「落水荘」の写真を見つけたことだった。世界で一番
有名なその住宅は、森の中の流れる小川と小さな滝の上に建っていた。発想も
ユニークだが、絵的にも素晴らしいもので、子供心にしびれてしまった。以来
私はライトと同じ建築家を志し、この建物を手本に研鑽を積んできたのだった。

 ところが何という運命の悪戯か。まったく自由に設計できる唯一のチャンス
で、私は滝ではなく車が回転できる道路状の空き地の上に自邸を建てることに
なってしまった。その昔「建築はロマンだ」と言った建築家がいたが「道路の
上に建てる」とは何と情けない響きなんだろう。

開き直って、専門用語で「ピロティ」とカッコよく呼べないこともないが、こ
の広い道路状の空間を取り込んだ住宅はきっと珍しいことだろう。他人様には
まったく無駄で贅沢なスペースに見えるに違いない。もちろん、もう少し道路
が広いとか、行き止まり道路でないとか、敷地と道路の関係が改善されていれ
ば、こんな無駄な設計は禁物である。

 しかし、妻との縁を取り持ったジャガーは今のところ捨てられないし、もう
少し小回りの利く小型車も一台ほしいと思っていたので、2台分の車庫はどう
しても諦めがつかなかった。さらにここは奥に続くアパートへの通路も兼ねて
いるし、子供たちの安全な遊び場にもなるという勝手な理屈で、自分自身を納
得させ、間取りを確定したのだった。

 建物の中の道路のような空間は、構造的には周囲を壁で囲んだ方が安全有利
となるのだが、法律的には半分くらい外部に面していなければ許可にならなか
った。火災の時、煙が外に出ていくためである。その有効性の議論はともかく、
ちょうど車の排気ガスを逃がす意味でも有利なので、お上の指導に従って、所
々壁を取り払う設計とした。それでも北側のためか、まったく直射日光は射さ
ないので、昼間でもほんのり薄暗い場所となってしまった。

そして、自邸の玄関はこの陰気なエリアに位置することとなる。多分、家相を
見てもらおうものなら、どの先生も「きわめて凶」とのたまうに違いない。
しかし、こんな玄関でも良いこともある。まず暴風雨の時でも雨が絶対吹き込
まない。車の乗り降りが濡れないでできる。そして直射日光が当たらないので、
木製の玄関ドアが使用できる。自邸の玄関は大きな木製ドアと前から決めてい
た。しかも製作はヒノキ工芸の戸沢さんに依頼することになっている。夢が一
つ叶った。

「玄関の扉は内開きか外開きか。」設計者仲間で時々話題になる。わが自邸は、
外国映画に習って内開きとした。というのは冗談で、内開きにしたのには別の
理由がある。この玄関は車の回転エリアに面しているので、車が動いている時、
家族の誰かが外にドアを開くと危険なのだ。これが内開きを選定した単純な理
由だった。

 内部の玄関ホールに十分の広さがない時は、引き戸か外開き以外に方法がな
い。しかし、何度も言うように、私の場合は借地のために少しだけ広さに余裕
があった。ドアを内開きにしても、まだ靴を脱ぐスペースは十分残っている。
そもそもわが国では、雨仕舞の関係か、既製品の玄関ドアには内開きの標準仕
様は存在しない。つまり内開きのドアはタブーなのだ。事実をを無視して果た
してどんな結末になるのだろうか。自分で体験して答えを出したかった。

 ドアというもの、一般的には丁番が見えないのがカッコイイ。原則として開
く側に丁番は見えるので、内開きではドアは室内に開き、外からは丁番は見え
ないことになる。この面でも内開きは美しい。さらにこの場合、ドア枠の奥に
扉がつくので、奥行き感ができてドアは立派に見えるのもうれしい。この良い
例がホテルの客室のドアだ。廊下に開くと危険なので必ず内開きとなっていて、
枠も強調されるので単純なスチールドアでも豪華なものに見えてくる。


(つづく)

 
 
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