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設計のための下準備が楽しい

建物のプランニングを具体的に進めるにあたり、まず前述の「法律が作り出す彫刻」を頭に叩き込む。おもむろに白い紙に測量図から敷地の形状を写し取る。図面は紙の上がほぼ北になるように描くのがセオリー。道路も、その幅を計って敷地図のどこかに書き込んでおく。

今回の敷地は所有権ではなく借地のため、地主との約束で建物の構造は非堅固なもの、つまり木造に限られていた。よほどの都市部でない限り、旧法借地権では、概ね非堅固な建築(つまり木造)に限定されている場合が多い。そこで、作図のためにモデュールを91センチとしてこの敷地いっぱいに9ミリの桝目を薄く下書きしておくと次の作業が楽になる。

木造の場合、現在でも建材のほとんどの寸法がこの尺貫法に合うように出来ている。このモデュールで設計しておくと、実際工事を進める際、合理的でしかも経済的だからだ。ここまで下準備が出来たら、これを百枚ほどコピーする。いつも私はこのためにミスしたコピー用紙を日頃から捨てないでストックしている。裏面を再利用するわけだ。

「早くせんばねえ」
「まあ、待て、待て」

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