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強烈な西日が恐怖に

光は想像以上に上から降り注ぐことも伝えておきたい。特に夏場の太陽は真上にある。惜しいかな、本当に直射日光が欲しい冬場には、太陽高度は低く、南側に隣家が迫っていたりすると昼間でも暗い室内となってしまう。それでも、もし上から光を取り込むことが可能な状況であれば挑戦に値する。

また、北側が多少なりとも空いていれば、ここからも光を取り込むための窓を設けることを勧めたい。窓は南に、と言う固定観念は捨てていいと思う。北からの光は以外に優しく、安定していて私は嫌いではない。

敢えて付け加えるならば、私の自邸では、二階が私のオフィスで、西面に床から天井までの大きな一枚ガラスの窓となっている。その幅四・五メートル、高さ二・三メートルと言えばなんとなく想像していただけるだろうか。住宅でありながら、一見、ブティクや洒落たオフィスビルに似た外観は来訪者を圧倒し、ある意味で私の計算どおりの効果を発揮している。

ところが春に竣工し、夏に向かって時間が経過するにつれて、これが私をこんなにも悩ます事になろうとは。夏の気配が漂う頃、午後二時あたりを過ぎると、仕事に熱が入っている最中、決まって首筋から汗がスーと滴り落ちる。しばらく我慢をしていると、次にベルトのあたりの皮膚の谷間に、生温かいヌメリを感じて不快感がピークに達する。ちょっと待て、ここはマニラやバンコックではない筈だ。顔を上げると、道路を挟んだ建物の切れ間から、ガラス超しに刺すような西日が私のデスクを射っていた。

何か対策を取らないとたまらない。結局、事務所らしく縦型の白いブラインドでガラス全面を覆うことになった。以来、私の事務所(自邸)は、一年の大半、縦型ブラインドで遮断されたガラス窓の無愛想な建物になってしまった。あれ以来、私は住宅の間取りを考える時、憎い西日の存在を忘れたことは無い。

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