ARTICLE

「いったい、いつから工事が始まるんだ(怒)」

鳶の親方に直接不満をぶつける前に、紹介者でもある清水棟梁に苦言を呈することにした。相手は職人、一本気な気質の人間が多いので、感情的になるのは要注意。苦言はワンクッション置くのがちょうどいいと考えた。

「済みません。すぐ仕事に入るように言いますから」
棟梁の一言で気持ちは落ち着いた。

設計監理者として冷静に考えれば、基礎工事を担当する鳶の職人も、直ぐに工事に取り掛かりたいのはヤマヤマだろうが、何分すべてが屋外での仕事。雨天順延となって、前の工事にケリをつけなければ、すぐにこちらに来られないことだってある。鳶職の苦労は十分に理解できるというもの。しかし、ひとりの施主としては、工事の進行が今か今かと待ち遠しく、毎日頭から離れない。待たされた時の施主の気持ちが、今になってイヤというほどよく分かってきた。

これまで数多くの施主に対して
「大丈夫だから任せてください」
の一言で片付けてきた私は、人の気持ちの分からない大馬鹿者だったかもしれない。いついつから工事に入りますの、ほんの一言の連絡が足りなかったような気もする。改めてあの時の関根さん夫婦に謝らねばならない。

氏は日課であるジョギングの際、決まって建設予定地の前を通り、夏草が背丈まで茂る手付かずの敷地を見て、いつもガクッと膝が折れたに違いない。この時、工事を請け負った私や職人達は、決して放っておいた訳ではなく、初めてのSE工法で準備に忙殺されていたのだが、確かに施主に対して工事スケジュールなどの適切な報告をしていたかと問われれば否であった。

関連記事一覧

単行本

建築家が自邸を建てた その歓喜と反省の物語

Amazon&大手書店で好評発売中!

Amazonで買う

最新記事