久しぶりだね、月見るなんて

ところで、考えてみれば、屋根に窓を付けるなんて無茶な話でもある。しかも電動で開閉までするのだから驚きだ。一見無謀なこの試みを最初に挑戦した人は、実にエライと思う。日本でも、古い民家の小屋裏に一筋の光が差している写真をよく見かけるし、京の町家にも同様の光景が見られるから、特定の誰かの発明ということでもなさそうだ。既製品に限ればその実績と信頼性でデンマーク生まれのベルックス社のそれが安心感を誘う。既製品として、この会社が世界で最初かどうかは定かでないが、その普及度と品揃えを評価して、4台ともこの会社のものにした。

本体はほぼ完成品になっていて、外側はアルミ製、内部は松材で組まれている。しかし、ここ数年で日本の風土に合わせてずいぶん改良され、内部は樹脂製、網戸も標準装備されているらしい。ガラスは数種類の中から選べるので、どうせなら室内から雲の動きや星空が見える方が面白いと、網入りの透明ガラスを選択した。

ブラインドを内蔵した南側の天窓から空をゆっくり眺めることはないが、そのブラインドの隙間から満月が真上に大きく見えて、家族中で「おおっ」と時々歓声を上げることもある。また、ブラインドの無い北側の天窓からは、時々雲の動きに天候を判断できるし、東京の空のハンデはあるが、星の輝きを発見できたりする楽しさが味わえる。

この天窓のおかげで、とにかく我が家は一日中異様に明るい。朝起きて寝室を出た瞬間、今日の天気が手に取るように判るのがうれしい。自然と共に生きている実感がある。以前の古家とは月とスッポンの違いだ。こんな世界が、こんな暮らしがあったのだ。
「求めよ、さらば与えられん」

天窓を採用した理由は、窓から入る光の3倍に匹敵すると言われる天井からの光の確保だった。ところが、実際に生活をしてみて気づいたことは、明るさもさることながら、室内の風通しの良さだ。これが思わぬ収穫だった。この天窓をほんの少し開放するだけで、部屋のよどんだ空気が一気に上昇して抜けていくのが分かる。

五月のとある日曜の昼下り、この空気の流れを肌で感じると、加山雄三のセリフのように
「ぼくぁ、しあわせだなぁ」
と、妙にリゾート気分に浸ってしまう。しかし、この感覚はどうやら私だけでもないらしい。日頃から、長男のケイスケの蛮行に怒り心頭の妻のケイコも、
「ああ、イライラする。ちょっと、そこの天窓あけてくんない」
と度々、おっしゃる。よどんだ空気、いや、淀んだ自分の気持ちを、天窓が空高く開放してくれるらしい。

建築家 可児義貴からメッセージ

ショールームでお客様からご質問いただく、「可児さんてどんな経歴?」から、「なぜ設計事務所が住宅建設を?」「職人集団『チーム・クウェスト』って?」「SE構法にしている理由は?」「これまでの建設実績は?」「ホテルのような家づくりとは?」「予算は?」まで、本音で語っています。