建築家 可児義貴からメッセージ

QUEST代表・建築家 可児義貴のメッセージを、わかりやすくお伝えするため、SE構法を展開する(株)NCNの代表取締役 田鎖郁夫社長との対談で、お話します。

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略歴

まずは、可児さんの略歴からお聞きしましょう。

建築系の大学院を卒業後、マンションやホテルを展開する中堅デベロッパーに10年ほど勤務し、設計事務所として独立したまではよかったのですが、ちょうどバブルの崩壊に直面し、仕事が激減してしまいました。
そこで止む無く、日本を代表する大手設計事務所にお世話になり、主に超高層のホテルを何棟か担当しました。ここでは、多くの外国人デザイナーと協調する機会があり「空間をデザインする」感覚を身につけられたように思います。
その後、徐々に個人の仕事も増えてきたので8年目に退社して、その後はクウェストとしての仕事に専念しています。

設計事務所が住宅建設

住宅建設を始めた動機は?

今から30年ほど前、知人から「建売住宅を購入するので見てほしい」と依頼があり同伴したところ、あまりのお粗末さに驚き、「これなら土地を買って自分で建てた方がいい」とアドバイスしました。

そこで設計を担当されたのですね。

そうです。設計には自信があったのですが、なかなか予算に合う適当な土地が見つかりません。そこで、少し大きめの割安な土地を購入し、半分は注文住宅、半分はクウェストの所有にして建売住宅にしたのです。

またまた、思い切ったことをされたのですね。

ちょうど妻の両親が上京する計画があり、売れ残ったらそこに住んでもらうつもりでいました。ところが、販売に出すと意外に反響が大きく、現金で購入したいというお客さんまで現れ、「これだ!」と舞い上がってしまいました(笑)。

つまり、設計事務所が建売事業をすることになったんですね。

新聞の折り込みチラシに、私の顔写真を載せて「建築家が建てた建売住宅」と謳いました。これが業界でも話題となり、「住宅情報」のリクルートから取材を受けましたし、建売業者からは設計依頼が殺到しました。当時はまだ、デザイナーズ△△なんて言葉もありませんでしたから。

最初は建売住宅が主だったわけですね。

もちろんそうです。当時はネットも普及していませんので、注文住宅の集客は無理と考えていました。それに、施主がいない分、自由にプランを練り、好きな材料を使うことができるので楽しくて楽しくて。計画的に仕事が進められるメリットもあり、財務的に会社を維持するエンジンにもなりました。
しかし、建売住宅は、たった一人のお客さんにしか提供できません。そのうちに購入できなかったお客さんから「土地を探すから建ててほしい」と懇願されることが多くなり、建売住宅を1棟建てると、そこから注文住宅も受注できるようになりました。

土地探しは大変なのでは。

建売事業では、土地の仕入れがキーポイント。土地の入手にあちこち奔走しているうちに、仲介会社とのパイプも出来て、土地の評価にも精通できました。現在も土地から探しているお客さんには、そのノウハウを惜しみなく提供しています。一緒に候補地を見に行くことも多いですし、建築士なので、どんなものが建つのか瞬時に判断できます。

職人集団「チーム・クウェスト」

ところで、施工はどうされたのですか。

最初は地元の工務店に依頼していましたが、これがなかなかうまくいかない。現場で直接指示を出しても職人さんは「発注者の工務店を通してくれ」と。つまり、現場監督や工務店の社長を介さないと指示が出来ないもどかしさ。
私は、現場に行くと次々にアイディアが沸いて、「施主のために」変更を重ねるタイプ。位置や寸法を変えるだけなのに、変更を理由に後日、高額の請求が届いたりする。
それに毎回、職人の顔ぶれが異なるため、その都度、最初から懇切丁寧に設計の意図を説明しなくてはなりません。

それで工務店の機能も備えることにしたのですか。

私が「施主のために」と設計を頑張れば頑張るほど、驚くような高額な見積もりが届く悪循環。私の設計を適正価格で実現するには、工務店を経由せず、直接、職人さん達に依頼する形態を確立した方が早道と考えたのです。
幸い、大手の設計事務所の社員時代に築いた人脈があったので、ゼネコン(大手建設会社)の協力店、つまり末端の腕のいい職人さん達を紹介してもらうことが出来ました。

それがホームページに掲載されている「チーム・クウェスト」なんですね。

そうです。現在の施工チームは、約25年をかけて淘汰した自慢の精鋭部隊です。
どの現場も、ほとんど同じメンバーなので、細かい施工方法の指示をする必要はなくなりました。また、職人同士、お互いに顔見知りなので、「いい加減な仕事はできない」と、互いの配慮が行き届いているようです。
彼らの感想は、「クウェストの建物は、設計も材料も他と違うので面白い」らしく、「職人魂が燃える」とか。

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SE構法

ところで、弊社が展開するSE構法を導入する契機は?

住宅の設計施工を始めて数年経った頃、今から25年くらい前ですが、私の郷里に貴社の「生みの親」になる会社があり、偶然立ち寄ってSE構法を知りました。都内にはまだ施工例が乏しい頃で、「ならば同郷のよしみ」と普及に協力したのです。

それは、それは、誠に有難うございました。

いえ、いえ、他にも動機がありました。当時、ビカイチの専属大工が既に還暦を過ぎていて、近い将来、その人の腕に頼ることができなくなると危機感があったことです。また、高層ビルを得意とする建築士として、大胆な設計ができない木造在来軸組工法の限界を感じていたこともありました。

可児さんに「先見の明」があったということですね。確か、創業期の弊社のカレンダーに、先生の作品を掲載させて頂いたことがありましたね。

SE構法の施工例として、私の自邸の写真が廻りまわって、大手ハウスメーカーのカレンダーにも掲載されていたことがあり、あれには驚きました。今となっては、懐かしい話ですね。

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建設実績

住宅は年間何棟くらい建設されていますか。

これまで、過去30年間で建設した戸建て住宅は約130棟なので、年間平均4~5棟になります。もともとは設計事務所ですので、ビルの設計監理もあり、まあ、そのくらいがしっかり監理できる妥当な数でしょうか。

(株)NCNとしては、もう少し棟数を増やして受注して頂きたいのですが(笑)。

確かにそうですね。所員を増やして担当制にすれば、もう少し棟数は増えるかもしれません。実際そのような試みをしたこともあるのですが、なかなか私を超える技量の所員は少なく、どこかで妥協せざるを得なくなります。
当社は、私(可児)を信頼して依頼されるお客さんがほとんどなので、私の職人魂がそれを許さないのです(笑)。

SE構法についてはどうお考えですか。

現行の木造住宅の中では、最強の耐震構造だと思います。基礎も含めて必ず構造計算をしていますし、パッシブデザインの思想のもとに、温熱性能を強化していることも評価できます。長期優良住宅の普及と温熱計算の実施によって、もはや大手ハウスメーカーに劣るところは無いのではないか。全棟、完成保証が得られるのも安心感がありますよね。

ホテルのような家づくり

ところで、昨年、弊社とモダンリビングがコラボして、ムック本の「ML-ウエルカム(木の家で暮らそう)」を創刊しました。そこに掲載された作品の中でも、クウェストさんの「羽根木の家」の評価が高く、最初に掲載されています。お客さんが、クウェストさんに依頼した時のメリットや建物の特徴などがあったら教えていただけますか。

当社では、私を中心に、二人の若い設計士と一人の女性で構成されたチームで設計活動をしています。女性とは、私の妻ですが、主に施主の奥さんと共にキッチンや収納など「女性ならでは」の意見を設計に反映する役目を担っています。
当社に依頼された時のメリットとしては、まず、営業マンも事務員もいませんので、ほとんど固定経費が掛からないことでしょうか。その分、職人の手間賃や使用する材料費に予算が充当できています。同じ条件下であれば、確実に他社よりも秀でた作品になる要因のひとつです。多分、他社が、クウェストの真似をすれば、二年で経営が破綻すると思いますよ(笑)。

もう一つの特徴としては、クウェストのモデルルームとして公開している私の自邸で、竣工から今日までの約30年間に体験したノウハウが設計に反映されていることです。「これで万全」と自信満々で建築した自邸でも、長く住んでみると反省するべき点も多く見つかりました。この改善策が詰まったクウェストの注文住宅は、性能や品質において、相当高いレベルにあると自負しています。

デザイン的にはどんな特徴がありますか。

私は、これまで長い間、特にホテルの設計監理に多く従事してきました。そのホテルづくりの視点から見ると、一般の住宅は(大変申し訳ない言い方ですが)、ほとんど研究開発がされないまま、作り手の論理で推し進められてきました。最近になって、ようやく省エネの分野では、国交省の指導の下、整備が進みつつありますが、デザインの分野ではまだまだの感があります。
クウェストの設計では、そのデザインに関して、ホテルのノウハウを生かすことを得意にしています。高い天井や質感のある仕上げ材、安全面の工夫や色使い、衛生機器や照明効果などにもホテルらしさが感じられると思います。
もちろん、住むのはお施主さん。私の好みを押し付けるようなことは一切しません。お施主さんの好みも千差万別なので、生活のスタイルや好みを伺った上で、それを超える提案ができるよう毎回努力しているつもりです。

クウェストの作品を拝見すると、本物の木材や石などが多く使われているような気がしますが。

確かにそうです。予算に限らず、なるべくカタログに載っている新建材は使用しないようにしています。不思議に人工物は、作った時が一番美しく、すぐに劣化していく傾向にあります。その点、自然の材料は、年を経るごとに「味」が出てきますし、後々のメンテナンスも楽なんです。
最近は、流通コストもこなれてきましたので、全国各地から材料を取り寄せています。
設計を依頼される度に車中でプランを練り、地方の倉庫で材料を吟味します。旅行好きな私としては、趣味と実益を兼ねられる「楽しい仕事」という訳です(笑)。

ご予算

受注する住宅の規模や工費はどのくらいが多いのですか。

規模は全く関係ありません。13坪の敷地に三階建ての注文住宅を建てたこともあります。都内ですと40坪くらいのご希望が多いのですが、設計するといつも50坪くらいになっちゃう(笑)。毎回、予算管理を担当する妻(職人たちは、彼女を社長と呼ぶ)から叱られています。
更に、私が設計をする居間や食堂は、どこも天井高が3メートルを超えるので、それだけでも割高。それなのに、お客さんは「坪いくら?」と聞いてくる。割高を「だから割高ですよ」と言えなくて、ついつい黙って施工してしまう。この性格は一生治らないでしょうね。
最近、アベノミクスと円安、それにウッドショックなどでほとんどの材料が値上ったので、だいたい坪単価は100万円位が目安でしょうか。これでプロが見ても恥ずかしくない住宅を作る努力をするわけですが、さらに予算が許す施主さんには、「僕だったらこうする案」をいくつか提案して、その中のいくつかを選択してもらっています。この選択が多いほど、住宅のグレードは高まっていきます。

クウェストさんの事務所には、大量の材料見本があると聞いていますが、決まった標準仕様などがあるのですか。

材料見本は多いのですが、大手ハウスメーカーのように標準仕様は有りません。お客さんの好みと予算に合わせて、その都度素材の組み合わせをします。標準仕様が写真入りで揃っていて、それでよろしいのであれば、設計も簡単なので、きっとハワイで遊んでいますよ(笑)。
契約の時に、具体的な仕様が決まっていないことも多々あります。とりあえず、予算だけを決めておいて、工事に間に合う時点で、お客さんと一緒にショールームや工場を廻り、その時の最適なものを選定してもらうようにしています。また、タイミングよくホテルや公共施設の工事で余った高級材料を入手するルートもあります。

それは手間が掛かりますね。一緒に造り上げていくというか、つまり、可児さんを信頼して依頼するお客さんが多いわけですね。

完成引き渡しの後で、「クウェストに決めた理由は何ですか」とお聞きすると、「プランが良かった」が一番、次には「可児さんが信頼できそうだった」との回答が多いです。確かに具体的な仕様も決めないで契約していただくわけですから、信頼を裏切ることはできませんよね、これからも。

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本日は、可児さんの本音トークをお聞かせいただき、大変有意義でした。資産価値が高く、性能、品質に優れた住まいをご提供できる限られた住宅会社。それが私達「重量木骨プレミアムパートナー」です。
そのエキスパートとして、どうかこれからもソフト面もハード面も充実した「美しい木の住まい」を提供し続けていただきたいと思います。
本日はどうも有難うございました。

ありがとうございました。

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