
依頼主のAさんに伺ったところ「クウェストとの出会いはインターネットで何かを検索中に見つけました。」とのこと。最初は「とにかく相談だけ」とあまり多くは語らなかったAさん。土地は相続が内定していたものの、三世帯住居となるので、整理しなければならない諸問題がいくつかあったようだ。
その後のやりとりはネットで行った。クウェストからは特に営業はしないので、Aさんからの連絡を待って、質問にひとつひとつ答えていく期間が約半年。間取りの話になって、「他社との競合でよいので、基本案を作ってみますか。」との問いに、「お願いするとしたらクウェストしか考えていません。」と返答があった。こうなると、全力で期待に答えていくしかない。
いつも思うことだが、この仕事は、施主と設計士の間に、信頼感がないとハッピーエンドにはならない。
敷地面積は約50坪と、都心にしてはやや広い。しかし、廻りは全て三階建ての住宅にぎっしり囲まれている。敷地に何度も足を運び、太陽の位置と光の差し込み具合、それに風の流れを読み取る日々が続く。「明るい家をいかに実現するか」挑戦に値する仕事である。
二案をまとめた上で、簡単な模型を作製してプレゼンをすることにした。甲乙つけがたい案なので、Aさんも即決とはいかない。Aさんをはじめ、ほとんどのお客さんが大切そうに模型を抱えて帰っていく。夫婦で夜な夜な議論に花が咲いているのかもしれない。それを思うと「とても一日で作った。」とは言い出せない。
顔を見て打ち合わせすること数回。数日後に検討結果がネットで送られてくる。Aさんの場合、どれも的を得た返答なので、すぐに次の改善案がまとまって、そのやりとりは実に楽しい。
ただ、提出する改善案は一つでも、そこに行きつくまでに、いつも数十枚の図面を書いている。初回案の時は200枚は優に超える。自己満足の世界でもあるが、何案も考えていると、ふと「これだ。」と妙案に辿り着くことがある。パズルが完成した瞬間に似ている。
回を重ねるごとに施主の希望に近づいていく。ここを急ぐと施主の満足は得られない。
面倒でも、納得のいくまでお付き合いをお願いする。
施主の希望を取り入れながら少しずつ修正をして、ほぼプランが煮詰まった。
だが優等生のプランを前にして「何か物足りない」。そこで腹案を用意した。
「家の真ん中に光が降り注ぐ大胆なプラン」これが最終案と決まった。
最近では、酒酔い運転の防止を目的に、宴会を伴う上棟式(建前とも言う)が影を潜め、それに代わり工事の安全祈願として、地鎮祭を行うケースが増えてきた。
建築確認申請が終了し、いよいよ工事が始まる。
久々の大きな家、三世帯住宅の西池袋の家の建て方が始まる。
周囲に比べて低地だったため、基礎は杭工事を施して万全を期した。
最近の施工安全基準を順守するために、当社では足場設置と建て方を専門業者に委託している。立派な足場が安全を生む。
規模が大きいため、土台敷きから始まって棟上げまで
4日間を要した。
木造の場合は、材料が濡れないように屋根工事を急がねばならない。
夕刻まで作業が続き、その後に上棟式を挙行した。
近年、酒酔い運転防止のために、派手な宴会は控えている。
ノンアルコールビールで乾杯。
不思議なことに最近になって断熱材が市場から消えた。理由は不明のままだが、これが手に入らず中断している現場も出てきている。
当現場もグラスウールの調達が困難になって、やむを得ず木質断熱材(ウッドチップの塊)を購入して急場をしのいでいる。
厚さは何と10センチ。ずっしり重く効き目も相当期待できるのだが、如何せん高額なのが痛手。
居間と食堂に都市ガスによる床暖房を敷いている。設置コストはやや高額だが、毎月の運転コストは電気式より優っているデータがある。この上に無垢のフローリングを張る冒険を試みる。
床暖の熱で無垢の板は多少暴れるだろうが、「それもよし。」と施主さんと合意した。
昨年の異常気象による暑さに懲りて、屋根の断熱を徹底して研究し、外断熱を採用した。
さらに今回は遮熱効果のあるアルミ箔を天井の内側から張ってみた。
実験データによれば、太陽光線の熱線を反射する効果が期待できる。
夏の海岸、駐車している車のフロントガラスに貼ってあるアルミの日除け、あの応用となる。
通常、大工は二人一組の場合が多い。今回も宮大工の経験を持つ老練な棟梁とその長男の二人で途中まで順調に進んだが、半ばにして親方が腰を痛めた。
結果、しばらく息子が一人で頑張ることとなった。
父親譲りの腕は確かで、しかも仕事が早くて綺麗。時として、若さは何をも凌駕する。文句ない。
工事中は不安と期待でハラハラドキドキ。時間があれば毎日でも見に行きたい。
施主は誰しもそう思うらしい。よく晴れた日曜日に家族みんなで現場視察に来ていただいた。
階段の手すりも付いたので一安心。幼い長男も歓声をあげて走り回っていた。
木造三階建の住宅では、内装に耐火の規制がかかり、壁と天井の多くは不燃ボードで覆わなければならない。マンションや大規模な建築物では、この不燃ボードの施工を専門に請け負う職人の出番となるが、住宅の場合は、ほぼ大工仕事の延長で工事が進む。
土屋棟梁の場合、その気性からか、ビスの間隔が測ったように一定で、ボードの切断時に発生する石膏の粉もほとんど飛び散ることが無いため、現場が驚くほど美しい。
工事も後半に入ると、仕上げ工事のために多くの職人が現場に入ることになる。
当社では、専属の職人を組織しているので、ほとんどが顔見知りであり、休憩時間は笑い声が絶えない。
職人同士、仕事の進め方でお互いに暗黙のルールがあり、10時と3時の「お茶」の時間は、貴重なコミュニケーションの場となっている。
当社の場合、住宅の設計で、ゆとりの演出として、吹き抜け空間を設ける場合が少なくない。空調の効きが悪かったり、音が抜けたり、いろいろな問題はあるにせよ、その解放感は捨てがたい。
今回の敷地は、周囲を高い建物で囲まれているので、室内に光を取り入れる手法のひとつとして大胆な吹き抜けを作ることにした、まではよかったものの、内部にも大がかりな足場を設置せざるを得なくなった。
エアコンの本体と室外機とを結ぶ配管ルートを天井の中に入れ込むと、その存在が消えて美しい。居間の大型エアコンはこの方式を採用した。
そのためには、仕上げ工事の途中での仕事が追加される。工事職人さんには、二度手間で申し訳ありません。
内装の仕上げ工事に目途が見えてきたので、外の土間を仕上げることにした。
資材や廃棄物を整理して、駐車場と玄関の土間の下地作りを鳶の頭に依頼した。
土地のレベルを整え、砕石を敷いて翌日のコンクリート打設に備える。
駐車場に洗車のための水道を引いた。コン柱と呼ばれる散水栓を固定して、地中の給水管に断熱材を巻く。冬場の凍結を防ぐためである。
東京でも今年の冬は零度を下回った日があり、水道の凍結が問題になった。
今回の断熱施工は事前の備えである。
この住宅では、2台分の駐車場があり、玄関アプローチも長いことから、ポンプ車を用意して、コンクリートを流し込む。一気に行わないと美しく仕上がらないため、左官職人も待機して、総勢8人の協同作業となった。
あいにく、午後から雨の予報。もし天気予報が当たれば、雨に打たれてコンクリートの表面が粗面に仕上がってしまう。
半ば固まった状態で、養生シートをかけて保護することにした。
建物の壁や床に固定される家具が届いた。
最近、地震の余震も多いので、壁の下地には注意を払い、多少の揺れには動じないようにしっかり設置する。
内装はシンプルに仕上げ、家具の個性が映えるようにコーディネイトすることが多い。
内装工事が終了すると、什器備品が現場に届く。
傷がつかないようには養生シートが貼ってある。
そのシートを剥がしながら衛生機器や照明機器を取り付けて行く。
いよいよ完成も間近い。
私達はSE工法を扱う建築家をインターネットで探し、クウェストさんのホームページに辿り着き、可児さんの御自邸(モデルハウス)を訪問しました。可児さんの御自邸を訪問してから、その素敵な雰囲気が大変気に入り、何度かやり取りを重ねる中で簡単なスケッチによる設計案を複数提示してくれたことが決め手となり設計契約を結ぶこととなりました。
可児さんの進め方は、施主がどんな設計案に対して興味をひかれるかを意識して、施主のリクエストに基づいて設計案を創りあげていく感じです。ただ、他とちょっと違うのは、可児さんの美学と過去の経験値から「感動のある」とか「使い勝手の良い」といったコンセプトと離れた施主要望はバッサリと切り捨て、代替案として「こっちの方が良いんじゃないですか」と提案してくれる点だと思います。代替案を私達の目の前でサラサラと白紙に書く様は、施主にとって楽しい一時でした。
「感動のないものは作らない」は可児さんの哲学と思います。工事が進む中、現場に足を運べない時期に私達を安心させたのはこの哲学でした。妻とは「感動のないものは作らないってホームページに書いてあるから、きっと大丈夫だよ」と話したものです。着工後7カ月が経過して久々に現場入りした時のこと、今でも鮮明に記憶しています。大工職人による工事は綺麗な仕上がりを迎え、玄関から「光の井戸」と称する吹き抜けの階段を子供達とかけ上がるとリビングが眼前に広がり、さらに3階に上がるとテラコッタ・タイルを見下ろす小バルコニーが設けられ、子供達は大はしゃぎ、妻の表情にも喜びがこぼれ、私は出来あがった新居の満足感と、これから始まる将来の楽しい生活を想像させる「施主の感動」を得ることが出来ました。
人間は慣れるものです。新居に家財が運び込まれ、1カ月もするとすっかりその新居も自分の居場所として定着してきます。そんな頃から、今度は「安全で、使い勝手の良い」設計に気づかされます。道路に出る時の安全性、玄関スロープの角度は急すぎないか、室内コンセントの配置、窓の位置は最適か等々です。雑誌でも取り上げない「使い勝手の良さ」は、綺麗で豪華に魅せるモデルルームではなく、生活感のある現実の住居で毎日を過ごすことになる施主にとって重要な要素と思います。可児さんが御自邸の設計とそこでの実生活から培ったエッセンスが、施主の設計・建築に活用されていることは言うまでもありません。家族と食事する空間を爽やかな風が走り抜ける贅沢も、その一つです。
次はクウェストさんのホームページをご覧の方が、それぞれの感動、喜び、快適を手に入れることを心より祈念致します。
