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家族が集うダイニングルームが中心

人は誰しも、押し付けられた分だけその反動は大きくなる。これを作用反作用の法則と言う。ほんの少し前まで、我が家の食卓は80センチ四方のコタツ板だった。麻雀をするのにはちょうど良い広さだが、子供二人に爺婆を入れて家族6人の食事処としては、いつも不便さを感じていた。しかし「知らぬが仏」。それはそれで毎日がなんとなく過ぎていった。

部屋の広さは8帖間だったが、食事の場としてだけに留まらず、居間や応接間、子供の遊び場を兼ねていたのだから、毎日のイライラが蓄積した妻の髪の毛が逆立ち始めていたことに私は気づき始めていた。今や時の人になっている、そのまんま東、宮崎県知事だったら
「何とかせないかん」
と宣言するに違いない。現実的に設計事務所の仕事では、それを一挙に払拭するほどの収入や活力は得られない。
「畜生、あのバブルの崩壊さえなければ・・・」

それでも、狭いコタツの食卓は、毎日家族が集い会話を交わす大切な場となっていた。言い換えれば、食事の場が住宅の中心になっていたわけだ。紆余曲折あって、数年後に新居が建てられる境遇に至った時、最初に設計の与条件で重要視されたのがこの「食事の空間」だった。

これまでの生活で馴染んでいた8帖間そのものを、食事のみの場所として利用できたらなんと贅沢なことだろうか。ついでに天井の高さも3メートルを超えてしまったらすごい話だ。朝の光だって取り込んでしまおう。設計はだんだんエスカレートしていった。最終的に新居の食卓は、
「何でも大きい方がいいのよ」
と身体に似合わず豪語する妻の意見で、古家のコタツ板の約4倍の広さと決めた。確かにダイニングテーブルは大きい方が使用勝手も良いし、家族が一堂に会する場としての存在感も増すというもの。

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