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水廻りはまとめて配置

さて、次に、このダイニングに接して、くつろぎの場として居間を置くことになる。テレビを見たり、食後にしばらくゴロゴロする場所である。家族が集う夕食後は、考えてみれば既に日が落ちて暗くなっているので、必ずしも日の当たる南側にある必要は無い。しかし、昼間もゆっくりできる日曜日の午後あたりを想定すると、やはり日当たりのよい南側に位置しておくのが無難かと考えた。

確かに都心の住宅地では、すぐ南に隣家が迫っていて、いくら南側に居間を配置しても、直射日光はおろか、真昼でも薄暗い空間になってしまうことがある。以前の古家もそうだった。設計者としての私は、こんな時は、無理に南に拘らず、やや北側に引いて位置し、思い切って天井を高く取って、上からたっぷりの陽光を取り込むことを提唱している。

このタイプのプランは、これまでも複数の住宅の設計で採用し、お客さんからの評判も悪くない。私のオリジナルでもないのだが、都心の密集した住宅地での設計手法としてはひとつの解決策だと思われる。

さて、自邸の間取りの話に戻る。パブリックゾーンで残るは水廻り。これはごく一般的な方法なのだが、キッチンの近くに置いて、水を使う場所を一か所にまとめてしまうことにした。実際、水を使う場所はイコール主婦の居場所だから、互いに近くに在った方が奥様達にもウケるに決まっている。

もう一つの利点は、とかく工事費が割高な給排水工事では、場所を近くにまとめることで、配管の長さが短くなり工事費の削減につながる。配管の長さが短ければその分故障個所も減り、将来のメンテナンスも楽になる。ビルの設計でも、トイレや湯沸し室などの水廻りは一ヶ所にまとめ、また、下から上まで同じ位置にあるのが常識なのだ。きっと住宅でも同じことが言えるはずだ。

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