建蔽率との戦い - 間取りを考える - SE構法、重量木骨、注文住宅なら一級建築士事務所 QUEST クウェスト

建築家の自邸、満足と反省の物語

建蔽率との戦い

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  メールマガジン 「建築家の自邸、満足と反省の物語」

  2002/5/14(できるだけ毎週火曜日発行)

  第3章 間取りを考える

   2.建蔽率との戦い

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


□ ご購読感謝

みなさま、こんにちは。はじめまして。
ご購読いただきまして誠にありがとうございます。

このメールマガジンは、これから家を建てる方のために、建築家の私が自邸
を建てたときのエピソードを物語風にアレンジしたものです。
少しでもみなさまの参考になれば幸いです。



■ 2.建蔽率との戦い


配置計画が終わった頃の図面では、具体的な部屋の広さはまだ定かになって
いない。この段階で全体の床面積を計ってみることにした。と、やはり案の定、
建蔽率オーバー。いつもの事ながら「またこいつとの戦いか」とため息が出た。

 さてどこを削るのか。平面的な配置計画図でバランスを考える。夢も膨らん
で縮小する場所も簡単に見つからない。どの部屋も削れない。とすれば廊下や
階段をいじめるか。

 否である。

 これまでの経験で、こうした場所に余裕がない住宅ほど快適さが失われ、貧
弱な印象になってしまう。考えた結果、各個室の面積をそれぞれ0.9掛けとした。
8帖の個室が7帖になっても以外と影響は少ない。

 一般的に、住宅の設計の場合、居心地の良い空間を求めると、ある程度横へ
の空間の広がりは欠かせない。日当たりや風通しの関係から、特に2階に居間
や食堂を持ってきたプランの場合には、ちょっとしたガーデニングが可能な広
めのバルコニーがどうしても不可欠だ。

 ところが、このバルコニーの出幅は1メートルまでと建ペイ率で規制される。
数年前までは床がスノコ状で雨が下へ落ちるような形なら許されたものが、今
ではしっかり建ペイ率に算定する指導をする区が多い。都内で30坪程度の敷
地の場合、奥行き1メートル以上のバルコニーを確保することは、逆に居間や
食堂などの部屋を削る結果となってしまうのだ。

 都市計画から考えて、建物を敷地いっぱいに造ってしまうことを規制するの
は当然としても、かすかな日差しを求めて、しぶしぶ2階に居間や食堂を配置
する場合、小さな小さなテーブルと椅子が置けるくらいのバルコニーを認めて
あげても良いのでは、と私は思う。屋外的に使用されるこのバルコニーに限っ
ては、その奥行きを2メートル程度まで建蔽率に入れないことを規制緩和した
ら、戸建て住宅に限らず最近雨後の竹の子状態に建設されているマンションも、
ずいぶん居心地の良い空間になると常々考えている。

 そんなに事から、こうした不合理な建築の指導に出くわす度に、「区会議員
に立候補して、、、、」と小声でつぶやいてみる私は、その都度女房の険しい
横顔に圧倒されその次の言葉を失ってしまう。

 幸い私の自邸の場合、やや土地に余裕があったため、必要最小限の部屋の面
積を削るまでには至らないが、3階に住宅部分があるので、万一の火災を想定
すれば広めのバルコニーは理想的だ。勿論ガーデニングも楽しめる。だがそこ
までの建蔽率の余裕が無い。

 一瞬、悪魔が忍び寄り手招きをする。「竣工後に、そっと増築したらどう。」
確かにその手はある。増改築と称してバルコニーを付加することなど、日常茶
飯事に行われていることだ。ただ、自分が当事者となるとちょっと躊躇する。
「武士は食わねど爪楊枝、建築家の俺にそんな違反はできねえぞ」

 この時ばかりは、自分の真面目さに嫌気がさした。


(つづく)

 
 
SE構法、重量木骨、注文住宅なら一級建築士事務所 QUEST クウェスト 東京都渋谷区笹塚2-41-13