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動線計画がゾーニングの要

さあ、ついに自邸の設計が始まった。6Bの鉛筆で、大まかにエリアを分けるゾーニングという作業に入る。今回は車を敷地内で反転させる大前提があり、必然的に一階のゾーニングから開始した。一般の住宅設計の場合は二階から始める時もあり、どちらからという決まりは無いが、途中で交互に見比べることは当然必要になる。

敷地図の縮尺は通常百分の一。ここで同じ縮尺で車の型紙を作る。色の付いた厚紙を切って車に見立て、軌道と駐車位置をあれこれ試みる。実際に指で型紙を押してみると、ほぼ実際の車の軌道が想定できる。そのうち、車の駐車位置は絞られてくるので、次に二階、三階への階段の位置を考える。

ビルの設計では、このような縦の動線(人の動き)の位置が最重要ポイントとなるのだが、住宅でも部屋の配置より優先してこの上下の動線をどこに置くかを、最初に考えておかないと後でまとまらない。このあたりが部屋の配置から考える素人さんと少し違うところだろうか。

一般に階段の位置は、建物の真中辺りが最も効率的と思われる。どの部屋へ行くにも動線が短くなるからだ。むろん、規模的に余裕があれば、わざと無駄な廊下を作って、見せ場とする設計なんか望むところなのだが、わが自邸の場合、アパートを併設することを決めた時点から、無駄を作るのは許されなかった。そこで、おのずと階段は建物のほぼ中心に居座った。

このゾーニングの時点での部屋の形は、おおまかな楕円で表しておけばよい。楕円の外郭は「この辺りでよい」と確信するにつれて濃く描かれていく。楕円の大きさは部屋の面積を表している。こうして縦長と横長の楕円の集合体で構成されたゾーニング図、つまり配置計画図は、百回以上の書き直しを経て、かなり具体的な間取り図に近づいてくる。

「できたと?」
「まあ、待て、待て」

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