裸電球の下での宴

その後、清水棟梁の指示で、手際よく座敷が作られた。座敷と言ってもベニヤ板のテーブルに柱を横に並べてベンチの代わりにした簡単なもの。現場はすっかり暗闇に包まれている。裸電球を吊るすと、いよいよ雰囲気が高まってきた。用意していた料理の大皿を急いで並べていく。

予期せぬトラブルのおかげで話題に事欠かず、職人衆もいつもより饒舌になっている。誰ともなく祝いの歌がでた。建築士の先生の自宅という義理も手伝って、次々と歌声が続く。ついに私の番になった。カラオケが苦手な私が、人前で美声を披露することはめったにないが、このままでは場がしらけてしまう。とっさに生まれ故郷に伝わる民謡の「木曾節」を思いついた。祝いの歌ではないが、こうした宴では不思議と民謡が似合う。「木曽のナー、なかのりさん。木曽の御岳山は何チャラほい」と二番まで続けて納めた。アンコールの声が飛んだが、笑って繕った。二番までしか覚えていないからだ。

こうして上棟式の宴は二時間近くに及んだ。あのキチガイ英語教師にお返しをしてやった形だが、夜も9時に近い。そろそろ他からもクレームが出そうな時間だったのでお開きとした。

建築家 可児義貴からメッセージ

ショールームでお客様からご質問いただく、「可児さんてどんな経歴?」から、「なぜ設計事務所が住宅建設を?」「職人集団『チーム・クウェスト』って?」「SE構法にしている理由は?」「これまでの建設実績は?」「ホテルのような家づくりとは?」「予算は?」まで、本音で語っています。