「トイレは狭くていい」なんて誰が言った?

「わぁ、このトイレ広い」
と家族の誰もが驚いた。たとえば寝室が8帖から7.5帖になろうと、6帖の子供室が5.5帖になろうと、あまり意識の上で大差はないが、もともと狭いという観念に捉われている場所が、ほんの少し広がるだけで感動に値するのだから人間の心理はおもしろい。

さて、トイレを廊下に面して配置したまではよかったが、洗面室と浴室などの水廻りをまとめることにしたので、優先順位としてどうしてもこのトイレが外壁に面しない。つまり、トイレに窓が確保できなかった。

たしかに戸建て住宅のトイレには窓がつきもののようだが、最近続々と建設されるマンションではほとんどトイレに窓がない。隣の住戸と壁でくっついて、外気と面する部分が限られるマンションでは、居室以外は物理的に窓が確保できないのが現実だ。

それでも、換気を窓に頼っていた頃はともかく、照明のスイッチと同時に換気扇が廻り、スイッチを消してもその後数分間、換気扇が作動し続けるという優れものの遅れスイッチが普及した現在では、機能的にはそこに窓が必要ではなくなっている。

我が家のトイレには、マンションのそれに習った訳ではないが、事務所のものを含め、いずれも窓がない。普段は真っ暗なので、使用する時はかならず照明のスイッチを入れることになるが、同時に換気扇も廻るので、たしかに機能的には何の問題もない。

ただ近い将来、私が夜中に何度もトイレに立つ羽目になった時のために、照明は極力暗めに設定したので、窓がないことも手伝って、やや閉鎖的な感があるのは否めない。風景画でも掛けて、奥行き感を演出する方法もあるだろうが、今改めて「どっち」と問われれば、「機能は別として、可能であれば窓は欲しいなぁ」と呟いてしまうかも知れない。

建築家 可児義貴からメッセージ

ショールームでお客様からご質問いただく、「可児さんてどんな経歴?」から、「なぜ設計事務所が住宅建設を?」「職人集団『チーム・クウェスト』って?」「SE構法にしている理由は?」「これまでの建設実績は?」「ホテルのような家づくりとは?」「予算は?」まで、本音で語っています。