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メールマガジン 「建築家の自邸、満足と反省の物語 NO.80」
2008/1/5(不定期発行)
第11章 各エリアの考察
3.廊下と階段(2)
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□ ご購読感謝
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ご購読いただきまして誠にありがとうございます。
謹賀新年
昨年の暮れは、ファミリータイプの分譲マンションの竣工を迎え、普段職人
衆から「先生、先生」と呼ばれている小生、本当の意味で「師走」を実感しま
した。
ひたすら多忙状態は10月ごろから始まっていたわけですが、今回は設計事務所
でありながら、事業主の立場が重なって、いいモノは作りたいは、ゼネコンの
変更・追加請求が怖いは、悪戦苦闘。
事業の採算性を考慮しながら、ユーザー側の視点で凝った建物を作ることの難
しさを身に沁みて実感しました。毎年、何百何千戸も供給しているデベロッパ
ーの作るマンションが、どれも画一的で無難な仕様が多いことの理由が理解で
きる気がしました。
ともあれ、何とか無事に完成したことを喜びたいのですが、今年は一度に多く
の入居が始まります。私を信頼して購入していただく皆さんには、これまでの
戸建ての施主と同様、長く安心して暮らしていただけるよう、なるべく現場に
足を運び、個性に合わせて更により暮らしやすい空間作りのお手伝いに邁進し
たいと思います。
竣工間もないクリスマスの頃に、新築マンションの玄関に植えた樹木を数セ
ンチ左に寄せようと踏ん張ったところ、左の腰が「グギッ」と音をたてて伸び
てしまいました。一歩も歩けない状態で事務所に辿り着くと、パソコンが固ま
っておりました。まだ購入して2年しか経過していないのに。溜まっていた疲
れがドッと押し寄せました。こちらは新品に交換してもらったものの、腰は全
く回復しません。50半ばの年齢も手伝って、完治にはあと数カ月との診断結果。
メルマガが進まない理由を述べつつ、これからお詣りに行ってきます。
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■ 3.廊下と階段(2)
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さて、話は自邸に向く。かなり冒険的発想だったが、生活空間の全てを三階
に置くことに決めたので、一階の玄関と三階の居住スぺースを結ぶ階段は、毎
日の生活の中で、いかに楽をして往復できるかが勝負どころに思えた。てっと
り早い話、ここ数年前から普及し始めているホームエレベーターの導入で解決
もできようが、設置の費用に加えて定期点検が義務付けられており、その保守
費用が将来重くのしかかってくる恐怖も手伝って、ここはひとまずローン返済
がなくなる頃に設置すればよいとの結論になった。
では、楽チン階段をどのようにして作るのか。これまでの記憶に残る階段を
ひとつひとつ思い起こし、検証作業を試みることにした。久しぶりに、蔵書の
建築雑誌にも目を通してみたりした。しかし、いつものことではあるが「これ
だ。」と思われる優れた案にはそう簡単には出くわさない。
「馬鹿ねぇ、勾配を緩くするしかないじゃないの。」
妻の言葉に屈服する自分を憐れみながら、初心に帰って、とりあえずは階段の
踏面を広く、蹴上げを低くする設計を進めた。
ただ、通常「鉄砲階段」と呼ばれる真っ直ぐな階段では、蒲田行進曲のワンシ
ーンのように、何かの拍子で三階から一気に転げ落ちるイメージが払しょくで
きず、半分行って折り返す方式の階段を採用することになった。いつの間にか
、もうそんなに遠くない老後の日々を考えると、真ん中の踊り場で「ふぅー」
と一息入れることができる「行って来いの階段」が大正解に思えたのだった。
そして、これを2基つなげれば、一階から三階までの間で合計3回息を整えるこ
とができる。踊り場の分だけ床面積が増えることを覚悟すれば、安全性も確保
できることになる。
小規模な住宅では部屋の広さを優先するあまり、どうしてもトイレや階段な
どの面積がいじめられる傾向にある。しかし、ほんの少しだけ部屋を狭くする
ことでこれらのスペースが充実し、グンと豊かな住まいとなるのに、そこに気
づかない人が以外に多い。我が家の場合、何度もプランを調整した結果、足が
載る踏面の幅は30センチ、蹴上げの高さが19センチと決まった。蹴上げをさら
に1センチ低くして18センチになったら経験上理想の形に近くなるのだが、
やはり全体の間取りに無理があり、「まぁ、いいか。」と設計途中で妥協して
しまうあたりは建築家としての資質に欠けている証拠に違いない。
木造の場合の間取りは通常三尺モデュール(91センチ)で構成されるので、
階段の幅に関しては、柱の太さと仕上げ材の厚さを差し引いて、残り約76セン
チくらいが一般的なのだそうだ。が、しかし、建築家としてはここで良しとし
てはいけない。廊下についても同じことが言えるのだが、ここでモデュールを
変えて、ほんの数センチ広げることで豊かな空間となるのだ。階段や廊下の幅
は、せめてあと10センチ広げて有効で90センチ近く確保されれば、都心での住
宅としてはほぼ合格点と言えるようだ。我が家では何より階段に重点を置いた
ので、清水の舞台から飛び降りる覚悟で、その幅を有効1メートルとしてしま
った。こうなると、もうモデュールもクソもない。なぜなら、これから三階と
地上を毎日何回も往復する未知なる生活が待っているのだから。
(つづく)
