ハワイの風に吹かれて

住宅の間取りを決定する時、「何が一番のキーワードですか」と依頼者からよく聞かれる。正統派の建築士は「ケースバイケース」と答えるのだろうが、それでは物事は先に進まない。私としては、これまでの経験から、敢えて「光と風」と答えることにしている。そして、このキーワードは、自邸を建築したことで確信になっていった。

以前から、光と風を重視して住宅の設計に取り組んできたが、建物が竣工した後は、住み手の感想からその成果を推し量るしかない。それが今回は、自分の五感で確かめることが出来るチャンスが到来したのだ。

最近、やれ高密度だ、高断熱だ、やれ省エネだ、と人為的な対策の必要性が叫ばれ、国交省の指導の下、大手住宅メーカーを先頭に様々な工夫や提案がされている。確かに、日本の住まいの在るべき姿を真剣に追及しようとする姿勢には、私も賛同できる。しかし同時に、果たしてその方向が正しいのか、確信が持てないでいるのも事実。

戦後の混乱期に、ただ火災の延焼を防ぐために考案され、コストが安いことから盲目的に全国レベルで普及した木造モルタル造を、戦後半世紀以上を経過した今日、本当にこれで良かったのか、検証してみる時期でもあると思う。

ところで皆さんも、五月の、とある日曜日の午後あたり。開け放した窓から、音も無くホホを撫でるあの「そよ風」の気配を感じて、一瞬ハワイの木陰に腰掛けた自分を想像してしまう、そんな経験はありませんか。もうこれは、理屈抜きに、生き物としての快楽に等しいですよね。

「ああ、日本でもリゾートがあるんだ」
「窓が開かないなんて考えられないわ。どうして建築家の人たちは開かない窓ばかり作るのかしら。ガラス掃除もできないし、布団だって干せないのに」

妻は、新進気鋭の建築家が設計する開かない窓オンパレードの美しい住宅が好きになれないと言う。

建築家 可児義貴からメッセージ

ショールームでお客様からご質問いただく、「可児さんてどんな経歴?」から、「なぜ設計事務所が住宅建設を?」「職人集団『チーム・クウェスト』って?」「SE構法にしている理由は?」「これまでの建設実績は?」「ホテルのような家づくりとは?」「予算は?」まで、本音で語っています。