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SE採用のチャンスが到来

「SE構法」のSEが何の略なのか、実は今でも知らない。SE構法を展開する株式会社エヌ・シー・エヌの担当者から、幾度も聞いたことがあるが、未だに覚えられないでいる。年齢のせいかもしれないが、余分なことは覚えない主義だし、どうせゴロ合わせで誰かが考えついたネーミングなのだろうからどうでもいいかと。

SE構法では、柱も梁も土台もすべて集成材となる。集成材とは、無垢の材をいったん片手で楽に持てる程度に切断し、再度ランダムに接着剤で張り合わせたもの。接着材の信頼性と、経年変化のデータ不足が多少懸念されるが、良質の木材が極端に少なくなってきた今日、癖のある無垢材に比べて、実験的にどの材も同じ強度を示すことから、構造計算が信頼度を増してくる利点をもっている。

最初は半信半疑だった私が、この構法について、まだ商品説明もシドロモドロだった営業担当の後藤氏から、あらゆる資料を取り寄せて検討をし始めたのには二つの理由があった。一つは、在来工法で設計して熟練の大工の腕に頼っていたのでは、大手ハウスメーカーに押され、時代遅れになるという不安と、もう一つは、生まれ故郷の産業振興に微力ながら貢献したいと考えたからだ。

SE構法の場合、材と材を結ぶ仕口は独自な加工と金物により、工業製品の精度で生産される。そして、実際に現場で組まれた骨組みを見ると、むしろ鉄骨造に近いことが分かった。特殊な金物を取り付ける都合上、水平方向の材、つまり梁の太さがこれまで見慣れた在来工法のそれより一段と増し、明らかに頑丈そうで骨組み段階でも十分に立派である。

その他にも、有利な点はいくつかあるが、特筆すべきは、斜めの補強材、つまり筋かいが不要なこと。従って、在来工法につきものの、耐力壁が少なくてすみ、広い開口部が可能になった。この点でも、鉄骨造によく似ている。

こう見てくると、確かに新進気鋭の設計士には、すぐにも飛びつきたい魅力が詰まっている。どちらかと言えば、コンサバ(保守的)な私でさえ、いつかは採用してみたいと思い始めていた。しかし、こんな時、決まって神様はイタズラをする。なんと、このSE構法を採用する最初のチャンスがすぐに到来したのだ。

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