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SE構法との出合い

帰り際、社員らしき人物に、本社に立ち寄るよう勧められた。ちょうど帰り道だったし、以前に集成材では国内でも屈指の会社と聞いていたので興味もあった。正々堂々と受付に
「東京の設計事務所やでねぇ」
と仁義を切ってみた。

やがて三名の技術者が現われ、この地方独特の「みゃあ、みゃあ」言葉が飛び出した。名古屋弁に似ているが、もう少し柔らかい。私も負けじと方言で応戦する。実にこの言葉を使うのは何年振りだろう。すると、やはりそこは地元出身者同士。会った瞬間から打ち解けムード。田舎はこれだからいいよねぇ。

最近、地方の公共建築で木造のブームが起きている。その一翼を担うのが、この会社の得意とする集成材だった。無垢の木材の欠点である反りや割れを抑え、しかも均一で太く長い材料を作ることが出来る。これまでは鉄骨造としたものを集成材で代替えできることになった。そして、木の持つ優しさや暖かさが、子供や老人のための施設には好評なのだという。

「体育館や学校などの実績は、よう知っとるけど、この技法を住宅レベルに応用できやへんかね?」

私の質問に、笑みを浮かべて技術部長の伊東さんは答えた
「ちょうどそれを開発したばっかやでいかんわ。今年の内にも行政の認可が下りる予定やもんでねぇ。まあ、いっぺん使ってみてちょうでゃあすか」

これが「SE構法」との最初の出合いだった。

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