ARTICLE

木の効果的な使い方を学ぶ

海外の話題のリゾートホテルのパンフレットを手にすると、決まってどの写真も全体的にオレンジ系で、暖かい高級感が漂う。その理由を探ってみると、それは内装に木が多用され、そこに蛍光灯ではなく白熱灯の間接光が当たっているためと解釈される。やや強引な理由づけかもしれないが、確かにそのシーンが多いのだ。

反面、国内の都市ホテルのパンフレットは、写されている空間のどれもが、なんとなく白っぽい印象。無難な明るい色の大理石のインテリアが多いからだろうか。このことを日頃から強く感じている私には、どうしても木を生かした内装が捨てきれないでいた。

かなり個人的な意見だが、木は扱い方によっては民芸調になったりする。つまり、使い方によっては野暮ったくもなるのだ。その顕著な例は、一つの空間の中に、いろんな種類の木を無造作に使用している場合に多い。逆に、限られた種類の木で構成された空間は、たいてい美しい。まあ、許されても二種類までかと思われる。

また、木自身も女性に似て、美しい木と、そうでない木がある(おっと少々失礼か)。よく構造体の柱や梁をそのまま表しにして、内装に取り込んだ住宅を見かけるが、ひと時代前の、厳選された素材ならいざ知らず、今日の流通材では乾燥が未熟で、後に割れが生じたり、構造計算では大丈夫とされていても、貧弱な細い柱や梁は、不安感や安っぽさを感じてしまうことがある。構造体としての木と、内装としての木は、はっきり分けて使用したほうが無難だと思うがどうだろう。

ところで、こう見えて私は
「木についてはチョットうるさい奴」
と仲間の設計者達から囁かれる存在である。その所以は、まず大学を卒業して社会に出たての頃、注文住宅を供給する会社に就職した際、
「大卒の青二才は現場の何も知らない」
と大工達に笑われる前に、五感を駆使して懸命に樹木の種類を覚えた経験から始まる。この頃、主に構造材として使用されていた国産の針葉樹はもちろん、造作材として使用される南洋系の輸入材も自分の手で直接触れ、さらに香りを嗅いでその特徴を体に覚え込ませた事が懐かしく思い出される。

関連記事一覧

単行本

建築家が自邸を建てた その歓喜と反省の物語

Amazon&大手書店で好評発売中!

Amazonで買う

最新記事