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内装では、集成材が無垢を超える

さて、ご存知のように充分乾燥されていない無垢の木では、割れが入ったり反ったりして内装材としてはすこぶる具合が悪い。そこで、集成材の表面に美しい木目を薄くスライスした単板を貼る「練り付け」という技術が、家具を中心に発達している。こうすることで、普段は高価な銘木なども、普及品のように使用できるようになった。

私は、江東区木場の木材問屋から、建具の枠や窓枠を専門に、この練り付け作業を行っている工場を紹介してもらった。この集成材工場、千葉県柏市の工場団地の中にあった。実際に行ってみると、若い社員数十人がフル操業中。以前はマドンナと呼ばれたであろう経理担当の女性をはじめ、皆さん明るく親切だった。こうした会社では社長の人柄が表れる。

社長の今西さんから聞くに、
「昨今のマンション建設ブームで、高級仕様の内装として、木肌が美しい練り付け材の需要が高まってきている」

塩ビのシートで包まれた新建材の加工品が氾濫するご時世、差別化を計るため、内装の見映えを上げようとすれば、大手のデベロッパーもこの練り付けの手法に行き着くらしい。

「安かろう悪かろう」が横行する今日の建売住宅やマンション建設業界。そんな折、こうしたひと手間かけた工場が忙しいのはとても喜ばしい。当然のこと、わが自邸でも採用することにした。

図面から数量を拾って、実際に発注をしてから納品までに、約一ヶ月を要する。

では、樹種を何にするか。一般的には、ナラやサクラなどの広葉樹が大半を占めるという。一方、和風住宅では事情はまったく異なり、そのほとんどが針葉樹の材で構成されているのがおもしろい。

木肌が細かく白木のままでも美しいヒノキや杉が、木と紙と畳で構成された日本の伝統建築の主役となったのも自然の成り行きだったのだろう。そもそも木材は輸入するものではなかった。反対に、細胞組織が複雑で、色や木目も変化に富んだ広葉樹は、削ったままの肌はパッとしないが、一旦化粧をすると、がぜんその木肌が蘇る。最近、洋風の部屋で内装材として求められるのは、主に輸入材の広葉樹なんだそうだ。

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