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大きな蛍光灯は控えよう

さて、具体的に住宅の場合、魅力的な空間を作るためには、どうしたらよいのだろか。話は簡単。まず、安易に部屋の真中に、アクリルで覆われた大きな蛍光灯の照明器具を取り付けないことだ。これをしたら最後、外人デザイナーが「オオ、マイゴッド」と顔を覆ってしまうように、味も素っ気もない乾いた空間の誕生となる。

「でも先生、この天井からの光がないと、薄暗い室内になってしまいますよ」

ご心配はごもっとも。そんな時は、天井にダウンライトを控えめに配置する。そのあと、壁面にブラケットと呼ばれる照明器具を取り付ける。この場合、多少光が透過しても良いが、直接目に飛び込んでこないものがよい。このブラケットは背後の壁と天井を照らすことになり、柔らかい光が室内全体に広がっていく。

欧米のホテルや住宅によく見られる花瓶に傘を被せたようなスタンド型の照明器具も、光を背後の壁や天井に反射させて柔らかい光に変えている点で、ブラケットと同じ効果が期待できる。

更に、理想を追求するには、壁と天井、または壁と壁との間に隙間を作って、そこに光源が見えないように豆電球を仕込み、あたかも光が差し込んできているような印象を演出する間接照明が「光で壁を洗う」本命だ。最近では、ショールームや飲食店のような演出された空間には、無くてはならないテクニックとなっている。実際、青山や原宿辺りの洒落たお店を覗いてみてほしい。この間接照明が無い店舗を探す方が難しいはずだ。

ところが、この優れた照明方法にも弱点がある。センスのない人達には、はっきり言って無用の長物なのだ。
「なにも住宅でそこまで」
「電気代がもったいない」
と言われたら元も子もない。まあ、そう思う人も少なくないだろう。私は「それを言っちゃあおしまいよ」と開き直ることにしているが、確かに人それぞれ。強制はできない。

「いいじゃないの、幸せならば」
佐良直美の歌が思い出される。

自邸の場合は居間やダイニング、皆が通る廊下などにこの方法を取り入れた。また天井照明だけでなく、壁にブラケットを取り付けたのは、寝室、子供部屋、洗面室、さらに浴室、トイレにも及んだ。果たしてその結果は。後述するので、ご期待あれ。

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