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自然光が降り注ぐ明るいキッチン

見栄え的には御影石にしたいが、実際、ガラスのコップや陶器類をちょっと乱暴に置くと、パリッと無残な姿になってしまう危険がある。この現象は、ホーロー製のシンクにもよく起こる。とにかく、硬いもの同士がぶつかった場合は危険だ。これはモノに限ったことではなく、人間社会でも・・・(ここで少し人生論を語りたくなるが堪えて)。

しかしながら、自然の御影石が見た目にも良いので、人工大理石のコーリアンの中から石目調の物を選んで代用する事に妻も同意した。この配膳台、つまりセンターテーブルは使用勝手の点で大正解だった。買い込んできたビニールの袋をまずこの台にドサっと乗せる。キッチンの中心にあるため、最初にここが物で埋まり、他に散乱しないのがいい。もちろん配膳台として機能するが、普段は大きめの花瓶を真ん中に置き、季節の花を愛でる場所となった。私が久々に設計した家具である。浅くて幅の広い引き出しは、ひと目でモノが確認できるので、家族みんなが頻繁に利用するようになった。

朝食の時に、暗いキッチンだけはもうこりごり。最上階の利点を活用して、キッチンの真上にも天窓を取り付けておいた。おかげで夕方になるまで照明を点灯する必要はまったく無い。都心の住宅でここまで明るいキッチンは少ないのではないだろうか。自然光が降りそそぐキッチンは、実に気持ちの良いものだと気付いた。よく台所は、モノが腐るので日光が入らない方が良いと言われるが、食品はほとんど冷蔵庫と食品庫に保管されている現代では、必ずしも、そうではなさそうだ。ただし西日は別として。

天窓の項に書いたので重複するが、天窓の威力は明るさの確保だけではない。
風が抜けるのが思わぬ魅力であった。テンプラや焼き魚などの匂いや煙が篭る料理の後は、換気扇をフル回転させるより、この天窓をほんの少し開けてやる方が、より効果があった。数分後にはほとんど新鮮空気と入れ替わる優れものだ。自然の力は実に素晴らしい。

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