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建築家の自邸、満足と反省の物語

外断熱について(1)

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 メールマガジン 「建築家の自邸、満足と反省の物語 NO.40」

  2003/11/23(不定期発行)

  第6章 外装

   4.外断熱について(1)


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□ ご購読感謝

みなさま、こんにちは。
ご購読いただきまして誠にありがとうございます。

このメールマガジンは、これから家を建てる方のために、建築家の私が自邸を
建てたときのエピソードを物語風にアレンジしたものです。
少しでもみなさまの参考になれば幸いです。



■ 外断熱について(1)


 このところ、どの建築雑誌を見ても、外断熱の特集が目に入る。そういえば、
最近、私の事務所へ住宅の相談に来られる人達の多くから、この「外断熱」に
ついての質問を受けることがある。どうやらこれから家を作る人たちにとって、
関心事のトップ3に入るのではないかとさえ思われる。それもほんのここ数年
前からのこと。となれば、職業的にも「外断熱についてよく知らない。」では
済まされない。そこでいつだったか市販の書物を購入して内容を検討してみる
ことにした。マンションの新築ブームも手伝ってか、当時からこの手の参考書
は一般の書店にも数多く並んでいた。

 その研究成果を基に、外断熱工法について多少解説してみたい。簡単に言え
ば、外断熱とは外気と最初に出会う場所で建物を断熱してしまう方法で、実際
には建物を形作る構造材の外側に板状の断熱材を貼って、さらにその外側に防
火性能を有する外壁材を取り付けるやりかただ。コンクリートとか木材とかの
材質の違いはあれ、構造体自体が外気の温度差の影響を受け難い点からすれば、
建物本体の耐久性が増すことになり、断熱の理想の形に違いない。

 北海道などの極寒の地では、コンクリートの住宅で外断熱にした場合、昼間
室内でストーブを焚いていれば、夜間ストーブの火を消しても翌朝まで室内の
温度が下がらないという話をよく聞くことがある。これは、構造体としてのコ
ンクリートが蓄熱体としての役目を果たすらしく、一度温まってしまえば、外
の冷気と断熱されている訳だから、なかなか冷めない。外断熱工法の優れた長
所でもある。

 ただ難点もある。一つは断熱材の保護や防火のために取り付ける一番外側の
壁材の選択肢が狭くなること。最近流行のコンクリート打ち放しの場合は不可
能に近いし、木造でも上等の左官仕上げを所望されるとそれなりの工夫を必要
とする。もう一つは断熱材自体のコストアップと施工に手間がかかること。さ
らに、完璧を追求すれば、屋根や基礎まで外断熱仕様にしたくなり、これまた
手間暇がかかり、ひと騒動となる。そしてこのあと、問題は費用対効果の議論
に移ることになるのだ。

 対照的に内断熱工法とは、コンクリートや木材などの構造体の内側に、断熱
材を貼り付けたり吹き付ける方法で、鉄筋コンクリート造の建物では圧倒的に
この工法が採用されている。ところで、木造の軸組み工法では、外壁と内側の
壁の間に、ちょうど柱の幅だけ空隙が出来る。その隙間を利用して、そこにグ
ラスウールなどの断熱材を充填する方法を一般に内断熱工法と呼ぶ。これまた
実に合理的な方法で、施工の容易さもあって、全国レベルで普及している。そ
して、施工が簡単ということは工事費が安くなり、当然のことながら工事会社
や職人に受けがいい。

 施主のいない建売住宅では、もっぱらこの内断熱が標準仕様となり、注文住
宅でもこれまで施主の多くが何の疑問も持たなかった。「断熱材は入っていま
すよね。」「はい、勿論です。」と言う会話で終わっていたのだ。おそらく、
ただ暑い寒いの対策ならば、現在もこの方法で事足りるのだろう。

 ところが、数年前からこの内断熱に黄色信号が点滅し始めた。どこかの学者
先生や、熱心な建築家によって、この断熱方法の弱点が指摘され始めたのだ。
その弱点とは何か。簡単に説明すれば、外壁と内壁の空隙に充填した綿のよう
な形状をしたグラスウールの断熱材の内部に、水蒸気が溜まる「結露という」
自然現象が発生し、この水滴が、肝心な構造体の木材を腐らせてしまうのだと
いう。実に信憑性がありそうな指摘だ。いや、実際にそうした現象が既存の木
造住宅のあちこちで発生しているのかもしれない。そもそも木材の一番の大敵
が湿気だとすれば、重大問題に違いない。

 この指摘を今から6、7前に知って、正直なところ、私はぞっとした。木造
住宅の多くが、火災の延焼から免れるために、古来からある真壁を諦め、構造
体の柱や梁をスッポリ包んでしまう大壁工法が一般的になって久しい今日、熟
練の棟梁たちが常々口を揃えて言う「柱や梁が蒸風呂状態でかわいそう。」の
言葉を思い出したからだ。長年工事の現場を見ていると、その惨状は壁を剥が
さなくても容易に想像できる。もし本当にそうした現象があちこちの住宅で起
きているとしたら。

 ただし、木材は生き物と言われるように、ある程度呼吸しているので、「多
少の水蒸気なんか吸い取ってしまう。」という別の意見もある。相手は自然現
象。地域性やその立地環境にも大きく作用され、この内部結露説に手放しで同
調できないまでも、「その原理はもっともな話である。」と当時の私は妙に納
得したことを覚えている。しかし、どの場所で、どの程度「本当にそうなのか」
引き渡した後の住宅では、勝手に壁を剥がすことも出来ず、ずっと歯がゆい思
いを続けていたのだった。


(つづく)

 
 
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