
ガリレオの心境で「それでも陽はあたる」
宝くじで百万円も当たったらきっとこんな心境なのだろう。一刻も早く朗報を伝えたい気持ちと、もう少し妻を落胆させておいてからドラマチッ...
単行本『建築家が自邸を建てた』(その歓喜と反省の物語) 第1章です。
宝くじで百万円も当たったらきっとこんな心境なのだろう。一刻も早く朗報を伝えたい気持ちと、もう少し妻を落胆させておいてからドラマチッ...
通常、近隣説明はこうはうまくいかない。自分の家が、大きな建物の影にスッポリ包まれた様子を、図面で説明された北側に住んでいる住民は、...
借地の契約が成立した直後、管理会社の担当者が姿勢を正して別の書類を取り出しながら切り出した。 「次に少々、折り入ってお話が」 来た...
高層マンション建設の話は、実は商店街の八百屋さんから聞いた。寝耳に水だった。私たちが購入した土地の隣接に、しかも南側に十階建ての高...
新しく自分たちが住むことになる土地。もしかすると、一生ここで暮らすことになるかもしれない。本当にここで良いのだろうか。誰もがそう思...
こうなると一刻も早く、新しい借地人として、地主と折衝をしなければならないことがあった。 第一に、地主に名義変更料を支払い、土地の賃...
こうして、住むための土地の取得に大きく一歩近づいた私達。それでも、落札した興奮がおさまると、さまざまな不安が頭をもたげてくる。なん...
「○○番号××番、落札者カニヨシキさん、カニケイコさん。えっーと、これは共有ですね。落札価格△△円、以上」 もし、ほんの数秒遅れれ...
いよいよ競売の入札日が近づいた。一般の所有権は人気が高く、多くの入札があるが、私達が狙うお化け屋敷の隣の土地建物は、あまり人気が無...
私は建築士という職業柄、土地を見ると、その上に建物が立体として浮き上がる。あたかも完成した建物が原寸大でそこにあるように。つまりこ...
その昔、あの建築家の安藤忠雄さんが「都市ゲリラ」と称して小規模な都市住宅を手がけていたが、私は今まさにその気分。安藤さんは、ここか...
私達の作戦は、とにかく二か月の間に競売の落札金を一時的に集めて、そのあと銀行ローンに切り替えるというもの。ところがそうは問屋が卸さ...
もう一度冷静になって考えてみる。入札をして落札した場合、自宅を建てるのだから、現在の入居者には全員立ち退いてもらうしかない。しかし...
後悔の念に駆られながら、ヤングエグゼクティブだった頃が妙に懐かしく思い出された。あのまま会社の歯車の一つとして耐え忍んでいれば、今...
仕事の合間に自転車で近くの賃貸物件を見て廻り、夜中に新しい家の設計を考える。そんな日々がしばらく続いていたある夜のこと。二人の子供...
いよいよ隣の医者が立ち退く期限が一年後に迫ったある日、今まで見たこともない形相で妻が取り乱して叫んだ。 「もう、ガマンの限界!」 ...
裁判が終わると同時に、バブル景気も終焉を迎えた。それからの数年間、仕事の依頼のFAXは激減。私と新妻にとっては、物心両面で惨めな時...
思えば、私も悪い。 建て替えの時は協力してもらえるのだからと下手(したて)にでて、賃料もずっと据え置きを容認。契約期間も通常は二年...
翌日のこと。早速意気揚々と、隣の医者の所に建て替えの意思を伝えに行ったところ、思いもよらぬ展開が待っていた。 冒頭、私の契約した物...
この古家を買ってまもなく、私は高層ビル最上階のオフィスを飛び出して独立する。社員六百余名の中で、上から五指に入る地位を殴り捨てて、...