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遣り方とは建物の位置を決めること

ともかくも、午前中に地獄のような地鎮祭を体験して、どっと疲れたが、気を取り直して、午後から建物の配置を決める「遣り方」を実施した。大工に鳶職、設計者に施主まで揃っているので、家の配置という重要な事柄を決めるのにはちょうど都合がよい。住宅の工事の場合、大抵こうしたスケジュールになることが多い。私達夫婦にもやっと工事が始まる実感がわいてきた。

予め正確な測量図があったので、実際に木杭を打って糸を張ってみたが、ほとんど配置計画に狂いがない。最初に基準になるのが北側の隣地境界からの建物の離れ具合。次に道路からの離れも確認申請の図面に記された数値を守らねばならない。この2点は役所の中間検査で担当官が最初にチェックする。この間隔が数センチ違っていても確認申請のやり直しを要求されることがある。そうなれば原則として工事は中断してしまう。

したがって、設計監理者としての私は、習慣的にこの離れ具合のチェックだけは人任せに出来ない。さらに今回は施主としての立場なのでより慎重になる。何せこう見えても建築家の端くれの自邸である。工事中止の赤紙を貼られては立場がない。

遣り方で建物の位置が出ると、もうひとつ重要な決定事項がある。設計上の地盤のレベルを決めなければならない。住宅の敷地は必ずしも平らではない。むしろ同じ敷地内で20センチ以上の高低差がある場合のほうが多いのだ。建築の法規はこの地盤面が基準になっているので、この平均のレベルをどこにするかの判断は重要で難しい。

この敷地の場合、つい最近まで古家が建っていて、ほぼ平坦だったので、道路と接する位置で十センチ高いレベルを地盤面と設定した。原則、敷地は道路より幾分高くするよう建築基準法でも決まっている。それだけで水はけも良くなるからだ。

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