ARTICLE

基礎を高くして湿気から逃げる

基礎工事で鳶の親方に特別に頼んだことは、根切り(土を掘削すること)のあとに割栗石と呼ばれるこぶし大の石をケチらないで十分入れてよく突き固めること。土に突き刺すようにして隙間なく並べてしっかりと転圧をかけることで、地震時の横揺れに摩擦が大きくなり抵抗できる訳だ。

次に重要なのが基礎の高さである。コンクリートの基礎を地面からどれだけ立ち上げるか。最近では四十センチを主張する設計士が増えている。湿気に弱い土台を少しでも地面から遠ざけたい理由からだが、床下が高くなれば、何かの時に床下で作業員が這いつくばって移動できるメリットもある。

私は、実際に大雨の中で、カッパ姿で雨粒のハネ返しがどれだけ地面から跳ね上がるか観察してみることにした。案の定、結果は最悪。なんと三十センチは軽く超えて跳ね上がっているではないか。自然は想定外に脅威でござった。

土台や柱の付け根が湿気を帯びれば、木造にとって大敵のシロアリ君が住みつく絶好の環境が整う。仕事柄よく解体現場を見ることがあるが、決まって建物の下の方の土台や柱が黒ずんでいる。雨水が入り込んで腐っているか、湿気が多いためだが、濡れた内部は間違いなくシロアリ君にやられている。

そういえば私が生まれた茅葺の民家は縁側が高かったし、京都の古寺も靴を脱いでから、さらに何段かの式台を昇って床がある。代表格の桂離宮に至っては高床式の典型でもあるかのように、床下を人が立って歩くことが出来る。これらの木造建築が何百年前もから現存している事実を考えると、妙な小細工を施すより、自然の理に適った方法で、湿気を与えない方法が、木造建築を一番長持ちさせる秘訣なのだと気付かされる。

関連記事一覧

単行本

建築家が自邸を建てた その歓喜と反省の物語

Amazon&大手書店で好評発売中!

Amazonで買う

最新記事