三階に住む大胆かつ無謀な設計

我が自邸の上下の関係を少し説明したい。まず玄関を入って靴を脱ぎ、階段を14段上って二階に至る。ここには私の事務所へ入るドアがあるだけで、家族が暮らす三階へは、この後7段上って踊り場で「フゥ」と一息ついてから、更にもう7段上ってやっとたどり着く。

玄関を入ってから、階段を二度上るのは、さぞしんどいように思われるが、階段一段分の高さを20センチ以下に抑えたことと、カーペット敷きなので意外と疲れを感じないと思われた。

最近の都心部では、三階建ての住宅が多くなっているが、この場合、決まって居間や食堂のようなパブリックスペースは二階にある。日当たりや通風を考慮すれば、当然の結果であろう。しかし、玄関から二層分の階段を一気に上って、三階の居住部分にたどり着く大胆かつ冒険的な設計は、稀な存在だろうと思われた。

私もいつの間にか、そう若くはなくなってきている。いつかは階段の上り下りが、きつくなるだろうと予想はつく。

「まあ、もしそんな歳まで長生きができたら儲けもの」
と笑い飛ばしているが、その時がきたら家庭用エレベーターを増設することで妻とは意見が一致した。一抹の不安も抱えつつ、その代償として得られる眺望、日照、通風などを人一倍享受できる三階居住案に踏み切った。

建築家 可児義貴からメッセージ

ショールームでお客様からご質問いただく、「可児さんてどんな経歴?」から、「なぜ設計事務所が住宅建設を?」「職人集団『チーム・クウェスト』って?」「SE構法にしている理由は?」「これまでの建設実績は?」「ホテルのような家づくりとは?」「予算は?」まで、本音で語っています。