ARTICLE

命がけの旅

s_DSC00133

世界のリゾートホテルの中でも、ひときわ人気が高く高級路線を貫くアマングループ、今やインドネシアのバリ島やタイなど東南アジアを中心に二十箇所を超えるという。仕事柄、そのいくつかは視察しているが、どれも特徴があって興味深い。ところが、その一連の施設の手本にもなったホテルがスリランカにあると聞いて行ってみたくなった。

成田から直行便で9時間あまり。空港近くの都市、コロンボについたのは真夜中だった。発展途上国の夜は暗い。天井のヤモリたちを尻目にすぐに眠ったが、妻を誘わなくてよかったと思った。

翌朝、最初の目的地、ホテル「ヘリタンス カンダラマ」までは車で約4時間。埃の舞う幹線道路をひた走る。ほとんど信号はなく、全ての車が無謀な追い越しを仕掛ける恐怖のドライブが続いて、無事に帰国できるか不安になった。

小高い森の中腹に、樹木に覆われた姿でそのホテルは在った。自然の岩肌がそのまま廊下の壁になっていて、どこまでが外で、どこまでが内部なのか分からない。この自然の造形と建築が一体となったユニークなホテルの生みの親が、地元出身のジェフリー バワという建築家だった。

イギリス統治下の裕福な家庭に育ち、壮大な自邸を建てるために建築の道を志した恵まれた境遇と才能。「自然に包まれて、優雅に暮らす。」自邸の玄関に残された数台のロールスロイスが物語るように、彼のライフスタイルがそのまま富裕層の嗜好にマッチしたのだった。彼の作品が、インド洋の海岸に沿って点在しているらしい。

「一つ残らず見て回ろう」
貧乏性の私を載せた年代物の日産サニーが粉塵を巻き上げて疾走する。途中で何度も交通事故の現場に出会うも誰も関与しない。もちろんパトカーも救急車も来ない。内紛は治まったものの、本当の自由はまだ無いとガイドは嘆く。教育を見直し、電気を作ることから始めなければならない。安全で豊かな庶民の生活は遥か遠くに思えた。

農村地帯を横切って未開の原生林を抜けた所に、忽然と現れる高級リゾートホテル。そこには主にヨーロッパからの富裕層たちが日光浴を楽しむ別世界が在った。ふと黒沢作品の「天国と地獄」を思い出す。昔は日本もこうだった。頑張れスリランカ。

関連記事一覧

単行本

建築家が自邸を建てた その歓喜と反省の物語

Amazon&大手書店で好評発売中!

Amazonで買う

最新記事