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一乗谷

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出張の折、福井県の一乗谷に寄ってみた。戦国の世、100年余り続いた朝倉一族の居城跡である。

NHKの大河ドラマ「江」ゆかりの地であることや、ソフトバンクのCMの舞台となっているため、さぞかし観光客で混んでいるかと案じたが、意外にも初秋の一乗谷は、長い間時間が止まっているかのように静寂に包まれていた。

濠を掘る代わりに、攻め入ることが難しい山間の地を選んだのだろう。僅かな平地の真中を流れる清流に沿ってタクシーを走らせる。観光客用の駐車場付近で降りると、すぐ近くに西日に照らされた唐門がまぶしかった。朝倉義景の住まい跡であるらしい。

織田信長に焼き払われてから、集落一帯は歴史の中に眠り、苔むした基礎石だけが整然と並んでいる様が余計に往時を偲ばせる。

私の先祖ゆかりの明智光秀が、生誕の地である長山城(明智城)が陥落する際、一族の血を絶やすまいと逃げ延びて庇護されたのが、この朝倉義景であった。そんなことから、感慨深く遺構を巡ることとなった。

この一乗谷の山の尾根をひとつ隔てた深山にあって、年末の「ゆく年くる年」の常連、大本山永平寺にも行ってみた。

「生まれたものは死に、会ったものは分かれ、持ったものは失い、作ったものは壊れます。時は矢のように去っていきます。全てが無常です。(道元)」

若い雲水たちに習って坐禅を試みるが、すぐに這いつくばって退散。痛タタ

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