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カウンター材に一刀入魂

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最近、住宅建築でアイランドキッチンが主流になってきた。この場合、シンク前のカウンターが重要なデザイン要素になってくる。あちこち探し歩くうち、とうとう佐賀県の大川にある製材所まで辿り着いてしまった。

以前からこの地域は西日本の家具製作の中心地として発展し、街道筋にも家具工場らしい建物が続いている。今回は、これらの工場に材料を供給する製材所のひとつを訪れたのだった。広大な資材置き場には、輸入された原木が所狭ましと積まれ、その巨木の数々に圧倒される。

小生の好みも手伝って、今回はアメリカ産のウォールナットに照準を当てて、適材を探すことにした。こうした材木は、一般に「立方米いくら」と値が付いている。立方米100万円もするウォールナット材は、輸入材の中でも最高級品と言える。

これまでの経験から言わせていただくと、カウンター材としての筆頭はヒノキかこのウォールナットに絞られる。自邸では桜材を使用しているが、磨き込まれた鮨屋のヒノキのカウンターには及ばない。ヒノキは手触り、色彩、匂いでも他を圧倒するからたまらない。

ウォールナットに惚れたのは、四国は高松市にある桜製作所の家具との出会いがあったから。家具デザイナーであったジョージ、ナカシマ氏の遺志を受け継いだ永見父子が作り出すアメリカ産のウォールナット材を使用した椅子やテーブルは、追従品は多くあるものの、現在も孤高の域に達している。予算さえ許せば、この家具の一連のシリーズに囲まれて暮らしたいとさえ思う。(ジャーナリストの桜井良子さんの書斎がそうだった。)

日も暮れる頃、やっと選定を終えて切断を依頼した。カウンターの場合、その板の個性を生かすためには、「木取り」に神経を集中させねばならない。「あと1センチ、あと一寸右に、よし、そこだ。」この一瞬こそ自分の感性を信じる他はない。

疲れきって宿に戻る途中、同行した仲間と地の酒と肴を求めて佐賀の夜の街へ。これがまた、たまらない。翌日、少し足を延ばして福岡県柳川で舟遊びと洒落てみた。

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